【大紀元日本2月27日】先月更迭された香港の有力紙「明報」の前編集長・劉進図氏が26日午前、何者かに刃物で襲われて重傷を負った。香港メディアが長年、北京との間で報道の自由をめぐって攻防してきたことや、北京政府の権力闘争が事件の背景にあるとみられる。
明報の報道によると、劉氏は同日午前10時頃、香港太康街で、ヘルメットをかぶった男に後ろから6回にわたり刃物で刺された。重傷を負った劉氏はその後、病院に運ばれ緊急手術を受けた。命に別状はないという。男はスクーターで逃走した。
明報の編集長を務めていた劉氏は、先月6日、突然交代したことで話題になった。交代の理由は、明報が香港政府批判をつづけたことや、習近平寄りの報道で江沢民派閥の勢力下にある同紙オーナーや江派の怒りを買ったことなどが指摘された。
同紙は香港の返還を控えた1995年、江沢民政権時にマレーシアの実業家・張暁卿氏が買収し、その後は親中、なかでも、親江の姿勢を取ってきた。だが、そういったしがらみに精通していない劉氏は、同じく江派寄りの香港政府を批判し、習政権を称える報道を繰り返した。劉氏が更迭されたあと、後任はオーナー張暁卿氏に近い、マレーシア華字紙「南陽商報」の元編集長・鐘天祥氏が務めると伝えられている。
大紀元が入手した情報によると、現在の香港政府トップ・梁振英氏が行政長官に就任したのは、江派の中心人物、曾慶紅・元国家副主席の取り計らいがあったからだ。現在、本土で追い詰められている江派は、勢力圏の香港で相次ぎ騒ぎを起こしている。それにより、習氏らの行動にブレーキを掛けようとする狙いがあると中国の権力闘争に詳しい消息筋は指摘した。
同筋は、今月12日、梁長官を度々批判し、ラジオ番組で活躍してきた有名な女性ジャーナリスト・李慧玲氏が突然解雇されたことを、江派の動きの一つとして挙げた。このことは23日の大規模なデモ行進につながり、江派は香港メディアや市民の怒りを現政権に向かわせた。そうした中、25日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合の開催地を香港から北京に変更したことが発表された。今度は、香港の混乱に対し習政権が警告し、対抗の手を打った形となった。
その翌日に起きた今回の傷害事件。真相はまだ不明だが、「中南海の熾烈な戦いの延長線上にある」と同筋は断じた。