【大紀元日本4月2日】3月31日に軍事裁判所に起訴された中国軍総後勤部の谷俊山・元副部長(中将)。習近平国家主席が軍の腐敗を「谷俊山現象」と呼ぶほど人民解放軍で不正が横行している。米紙ニューヨークタイムズ(NYT)1日付の記事は情報筋の話として、谷俊山調査を皮切りに谷の後ろ盾である軍部長老の不正に切り込む狙いがあると伝えた。また、同紙は、谷はすでに汚職に関わったすべての人を供述したとも報じ、さらなる大物の失脚をほのめかした。
起訴を報じた国営新華社通信は容疑の詳細について触れなかった。NYTは、調査状況を良く知る人物からの話として、内部調査によって、谷自身が管理する不動産開発プロジェクトからの収賄、昇進のための贈賄、多数の高級住宅の購入などの容疑が固められたと報じた。
総後勤部は軍の物資調達などを担当する機関で、谷は同部のナンバー3、230万人を有する人民解放軍内ではトップ30の元高官。そのため、元副部長への調査で軍全体に激震が走ったという。汚職金額が、一説によると3000億円と軍史上最高額を記録したほか、軍の上層部に飛び火するのも時間の問題だと同紙は指摘した。
習主席に近い関係者は、主席が、ある内部講話で、軍の汚職問題を批判し、軍の中でさらに規模の大きい「谷俊山現象」が存在すると問題の深刻さを指摘、「谷を生んだ土壌を深く掘り下げ」、「様々なスケールの谷俊山を処分する」と厳しい言葉を並べたと明かした。さらに、軍のほかの上層部メンバーに、これまでにない厳罰を下す可能性があると習主席は匂わせたという。
NYT紙が入手した情報によると、谷はすでに調査チームに軍事委員会副主任(事実上の軍トップ)の徐才厚上将を含む大物の汚職を供述した。一部の情報によると、徐はすでに軟禁状態にある。もし、汚職取り締まりが軍トップの徐まで踏み込むとしたら、習主席は未知の領域に入ると同紙は分析した。
軍の腐敗問題は1980年代から芽生えた。当時、政府は軍の維持費を確保するため、軍による商業活動を許可した。しかし、密輸や汚職の横行を招き、1998年に軍の商業活動が禁止された。しかし近年、軍事費の増加は軍の汚職の新たな温床となった。
また、軍保有の大量の土地は不動産価格の高騰で莫大な資産となった。不動産取引が軍の汚職問題の根源とも言われている。昇進のための贈賄が盛んに行われ、数十万ドルで将軍の肩書きが手に入れられるとある内部情報通は証言した。市場より数倍の値段で不良品を購入したなど軍の物資調達にも不正が伴っている。
谷は胡錦涛前主席が在任中、徐に引き立てられ、現在の地位に上り詰めたという。周囲の反対があったにもかかわらず、8年間に5回もの昇進を果たし、当時幹部の任命を担当する徐に多額な賄賂を送った疑いをもたれている。軍に近い情報通によると、谷は軍の上層部メンバーのために数百軒の豪邸を建て、土地取引の中で不正所得を得たという。谷自身も多数の不動産を所有し、北京の中心部だけでも30軒を超える物件を保有している。ある軍から情報を得た女性実業家によると、徐退任後、事務所から大型の象牙のオブジェを含む大量の高級贈答品が見つかったという。
この女性実業家は軍関係者と接触後、「谷は徐才厚の不正を吐いた」と証言し、「ほぼすべての人の汚職を供述した」とNYT紙に話した。
同紙は習主席が谷への調査を通じて、谷を抜擢した軍の重鎮や、谷の不正から甘い汁を吸った大物を失脚させ、軍への掌握を強めようとしていると分析した。