【大紀元日本6月13日】中国国務院は10日、香港の高度な自治を確約する「一国二制度」に関する白書を発表した。香港は中国政府の管轄下にあり、「完全な自治権」を持っているわけではないと強調。一国二制度に関して、「香港では誤った認識が多く存在」と批評した。それに対して、各方面から、「『一国二制度』を覆すためではないか」と懸念が高まっている。
1997年の返還前に_deng_小平氏とマーガレット・サッチャー氏が合意した「一国二制度」は、「北京中国政府の領域である外交・防衛政策を除き、香港は特別行政区として、自治の自由を持つ」と明記した。
返還後、こうした白書が発表されるのは初めて。
同白書は、「香港特別行政区が享有している高度な自治権は、固有の権利ではなく、最高指導部の承認に由来するものだ」と記し、「一国二制度」について、こう解釈した。「『一国』は中華人民共和国を意味する」「香港は、中国政府が直轄する地方行政区である」
また同白書は、香港の議会の決定を中国の全人代(全国人民代表大会)が覆すことができるなど、中国政府が香港に対して強い権限を有することを強調している。
香港中文大学歴史学部のジョン・キャロル教授は「典型的な中国共産党の言い回しだ」とそのやり方を批判した。
「香港基本法」でも確約されている、「香港の高度な自治権」が専門家の間で「この白書によって白紙になるのではないか」という懸念が一気に高まった。
普通選挙の実施も危うくなる
香港は2017年、トップである次期行政長官を選出する返還後初の普通選挙を行う予定。民主主義を訴える香港各界が長年抗議を続けた末、やっと中国政府に約束させた選挙制度である。
3年後の普通選挙の着実な実施を求めるため、市民団体はこの夏、中心部のオフィス街で平和的アピール活動を続ける計画で、22日には、普通選挙に関する民意を問う投票活動を予定している。
活動が幕開けする22日を目前に、同白書は出された。
活動の発起人の一人、香港中文大学の陳健民副教授は「我々の活動に対する警告だ」とみている。もう一人の発起人、香港大学法学部の戴耀廷副教授は「市民がさらなる行動を起こさなければ、普通選挙は実現できなくなる」と市民の支持を呼びかけた。
白書発表の翌11日、米国務省と英国駐香港総領事館は、同白書を批判した。
米国務省報道官は中国政府に対して「香港の高度な自治」という約束を守るよう求めた。英国駐香港総領事館も「香港の繁栄を持続させるには、民意が望む普通選挙の実施は重要だ」とコメントした。
それに対し、中国外交部の華春瑩報道官は12日の定例記者会見で「香港は中国の特別行政区で、香港の事務は中国の内政である。外国の干渉と指図を断じて容認しない」と両国の意見を一蹴した。
香港立法会の議員、公民党の梁家傑党首は「背筋が凍った」と同白書に関する感想を語り、「香港市民は中国政府に屈してはならない」と警鐘を鳴らした。
香港城市大学政治学部の鄭宇碩教授は「これは警告だ。すなわち、我々は、普通選挙ではなく、中国政府が望む選挙制度を受け入れるしかない」と同白書を解説した。
ベテラン評論家の鄭建中氏は「香港人にだけではなく、全世界へのメッセージだ」と国際社会の関心をよびかけた。
民主化運動「六四天安門事件」の学生リーダーで米国亡命中の王丹さんは「香港市民が白書を受け入れるなら、今後中共の奴隷になるしかない」と述べた。