【大紀元日本6月17日】中国共産党中央紀律検査委員会(中紀委)は14日、国政助言機関の全国人民政治協商会議の蘇栄副主席(66)が「紀律、法律を厳重に違反した」として取り調べを受けていると発表した。詳しい容疑についての説明はなかった。蘇は副首相級の高官で、習近平体制の発足後、相つぎ失脚した汚職幹部の中でもっとも官職が高い。
蘇は江沢民派の中心メンバー、中国共産党中央政治局常務委員会(党の最高意思決定機関)の元常務委員で曾慶紅元国家副主席の腹心とも言われている。
この20数年間で、2012年の薄熙来に続いて失脚した5人目の最高指導部高官である蘇は、もともと吉林省の地方幹部だった。蘇は、1999年から江沢民派に協力して法輪功弾圧に積極的に参加したため、曾の目に止まり大抜擢された。青海省、甘粛省、江西省(曾の古巣)のトップ、中央党校(党エリート幹部養成機関)の副校長などを経て、2013年はじめ、同会議の副主席になった。
専門家は「蘇の失脚を受けて、その黒幕である曾慶紅が粛清される日はもう遠くないであろう」と読み取っている。
曾は2008年3月の全人代で政権から引退したが、その後も一定の影響力を保っている。
国営新華社の異例な報道姿勢
中紀委の発表直後から翌15日まで、国営新華社通信は電子版のブログと掲示板(BBS)で、連続して7篇の文章を掲載し、蘇の黒幕の存在を厳しく問い詰めた。「政協副主席に登りつめた彼。だれが抜擢したのか、その責任はだれが負うのか」「調査が進むと、もっと大物の汚職高官が引っ張り出されるではないか」などと異例な報道姿勢をみせた。
なぜ、中国共産党政権の喉と言われている新華社が、ユーザと積極的コミュニケーションができるブログと電子掲示板でこれほど敏感な論調を続けたのか。専門家はこのことに注目している。
海外在住で中国問題専門家の趙迩珺氏はこう解説した。「蘇のボスは曾慶紅であることは公然の秘密だ。つまり、習体制は、蘇の失脚に対する国民の反応を試している。『もっと大物の汚職幹部』である曾を追及するための事前世論調査に等しい、前哨戦と捕らえていいのであろう」
曾慶紅を追究するための布陣が着実に張られている
蘇が失脚する前に、曾の古巣で長年影響力を発揮してきた江西省では、指導部の汚職取り締まりにメスが入った。姚木根元副省長、省人民代表大会常務委員会の元副主席陳安衆、省共産党委員会の秘書長(事務総長)趙智勇など、高官の失脚が相次いだ。
また、曾のもう一人の腹心、国務院直轄の大手国有企業「華潤集団公司」の宋林董事長(党副部長級幹部)が4月19日に身柄を拘束され、いまは取り調べを受けている。
こうしたなか、曾が最後に公に姿を現したのは5月14日。上海市で韓天衡美術館を参観したが、異例にも中国国内メディアはほとんど報道しなかった。
一方、5月下旬、大紀元時報が入手した内部情報によれば、曾はすでに監視下におかれていて、行動の自由が制限され、外部との連絡も絶たれているという。
「曾慶紅の身に間違いなく何かが起きている」とする専門家の見方が大勢だ。
大紀元のコラムニストはいまの中国の政治情勢を次のように分析した。習体制と江沢民派の戦いが白熱化しているのは明らかだ。しかし、法輪功弾圧による『反人類の罪』、『ジェノサイド』など、江沢民派を一網打尽にできる弱みを握りながら、習体制は政権への強いダメージを恐れるあまり、その一歩を踏み出せないでいる。江沢民派もこのことを分かりきっているため、最後まで反撃し続けるであろう。今後の展開はどうなるのか、一刻も目を離せない。