【大紀元日本6月26日】中国経済の先行き不安が強まっている。国務院の最新報告書は、景気がいっそう減速していると認めたほか、金融リスク防御の重要点を発表し、金融機関破産への対応策を研究、制定しているとした。
24日、中国中央銀行の劉士余・副総裁は国務院を代表して、全人代(全国人民代表大会)常務委員会に、上記の金融リスク問題に関する報告書を提出した。
報告書は、国内経済の減速リスクが高まっていると前置きし、一部の地区、産業または特定の時期に、金融リスクが集中していると記し、防御の重要点として、不動産や鉄鋼、炭鉱などの業界を取り上げた。また、経済構造の調整が難航していることや、一部の企業の負債率が非常に高いこと、金融機関が抱えている企業の不良債権が増え続けていること、(200兆円規模とも言われている)理財商品の債務不履行リスクの上昇などの問題点をまとめた。
金融リスク防御の重要点とされた不動産、鉄鋼、炭鉱などの業界のほか、世界が注目している「影の銀行」について、一部の情報を以下にまとめた。
★不動産バブルの問題
中国国内の住宅販売高が非常に低迷しており、住宅在庫が高水準のままで改善の兆しがみえない。一部の商業銀行は融資リスクを避けるため、住宅ローン業務を中止している。
北京航空航天大学の教授で経済学者の任若恩氏の最近の論文は、「中国の不動産発展による投資と就職への影響は非常に大きい。不動産業界の不振がもたらした固定資産投資の減少額が1兆元(約16.4兆円)を超す」と問題の深刻性を指摘した。
★多くの鉄鋼及び炭鉱企業が減産または生産中止
鉄鋼の売上が大幅に落ち込んでいるため、業界全体の赤字経営が30カ月間続いている。現在大半の企業が大量減産や生産中止に追い込まれている。
石炭価格の下落が止まらないため、炭鉱業もかつての面影がない。こちらもやはり多くの企業が減産または生産中止の対策をとっている。昨年1~11月まで、炭鉱業全体の赤字は405.54億元(約6650億円)に達し、石炭企業が集中する山西省では今年1~2月期の赤字が40億元(約656億円)になった。不動産バブルが崩壊した内モンゴルのオルドス地区の石炭企業はほぼ全てが廃業した。
★影の銀行の問題
今回の報告書は中国経済が抱えているもう一つの闇「影の銀行(シャドー・バンキング)」に触れていないようだが、2010年以降、中国の金融システムの一大問題として「影の銀行」が世界的に注目されている。
中国の「影の銀行」は、主に信託会社やファンド、貸金業者、質屋などを指しており、従来から、不動産バブルに拍車をかけ、投機を助長しているなどと批判されてきた。
ニューヨーク・タイムズ紙の16日付の報道によると、昨年末まで、「影の銀行」が抱えている銀行への債務残高は14.2兆ドルに達している。
米国の大手格付け機関スタンダード&プアーズの統計によると、4分の1~3分の1の中国企業は、この影の銀行から融資を受けている。同社の企業信用調査部門の責任者ポール・ワッターズ氏は、「中国の経済が低迷し、影の銀行までも問題が生じれば、中国発の世界金融危機が起こり得る」と警鐘を鳴らした。