【大紀元日本9月25日】「親が献血すれば、子どもの進学を優遇する」、「運転免許、大学入学許可書、結婚証書を受け取る前に献血する」。献血離れに歯止めをかけようと中国各地の政府は様々な対策を打ち出した。本来、自由意志に基づく献血だが、強要となりかねないこれらの対策に市民から批判の声が上がっている。
浙江省金華浦江県は7月24日、「親が8000ccを献血した場合、子どもの中学入試の成績に3点を加算する。6000ccに2点、4000ccに1点とそれぞれ加算する」との優遇策を発表した。1点差で進学する学校が変わってしまう受験戦争が激しい中国では、子どもの将来を案じる親心につけ込んだこの対策で、無理に献血する親が増えるのではないかと危惧されている。
しかし、最低でも4000ccの献血が必要のため、成人男性が1回400cc、年に2回で計算すると、子どもが優遇を受けられるまで少なくとも5年間を要する。今まで親が献血していなければ、来年受験を控えている子どもが不利になる。また、健康状態の制限で献血できない親もいるため、一部の保護者から「献血で進学が有利になるのは公平さを欠く」と批判されている。
優遇策を打ち出した同県と対照的に、陝西省宝鶏市は強硬手段を取った。同市は「軍人、大学生は年に一度、献血すべきだ」、「新人公務員は赴任前に一度献血に参加を」、「自動車免許、結婚証書、大学入学許可書を受け取る予定のある市民は、一度は献血すべきだ」などの規定を10月から実施すると発表した。
直ちに市民から「強制的だ」と疑問視する声が上がり、同市は「あくまでも奨励しているだけで、強要しているわけではない」と釈明した。強要していなくても、一連の規定から血液不足の深刻さがうかがえる。
近年、中国では血液不足が常態化し、今年に入ってから広東省、四川省など10数の省で血液の在庫量が危険水準に達し、一部の病院では手術ができない状態に陥っている。現在、献血に参加した人は全人口の0.84%にとどまり、世界平均の4.54%と大きな開きがある。
河南省で1990年代に入ってから、政府主導で貧しい農民に有償献血を奨励し、不衛生な注射針でエイズ感染被害が拡大し、住民の3割以上が感染する「エイズ村」が38カ所確認された。「エイズ村」の存在は市民の献血への不信感を招いた。
さらに善意で提供した血液が転売され、汚職幹部の私腹を肥やしたのではないかとの疑問を抱いている人も少なくないため、献血者の人数が年々減少している。