【大紀元日本10月28日】イスラム教徒の多い新疆ウイグル自治区で、中国当局はいわゆるテロ対策として取り締まりを強めている。これに対して、国際テロ組織・アルカイダは新規創刊した英字誌『復活』で、同地区でのイスラム戦士を求め、ムハンマドの預言者カリフの権威を「復活」を示唆する特集記事を出した。同地区で勢力を強める「イスラム国」への対抗措置とみられる。一方、在外ウイグル族リーダーらはこの呼びかけを否定的に見ている。
見開き2ページにわたるこの記事では、中国共産党によるウイグル人への迫害やその歴史を伝え、同地区でイスラム勢力を高めることを宣言した。同誌はアルカイダ宣伝広告部アス・サハブ(As-sahab)が制作した。そのなかで新疆を「東トルキスタン」と呼び、「東トルキスタンに関する10の事実」と書き表している。「1800年以上、中国から独立した地区だった」「この237年間、断続的に中国政府に占領されている」などと伝えている。
同記事は、東トルキスタンに対する中国政府の「犯罪史」を掲げる。1949年に中国共産党の支配下に置かれて以後、当局により450万人以上のイスラム教徒が死亡し、3万点以上のイスラム教書籍が燃やされ、2万8000もの礼拝堂・モスクが閉鎖された、と伝えている。さらに、1万8000のイスラム教教育施設が大型倉庫に変わり、12万人以上のイスラム教学者や指導者が処刑されたと主張している。最近の出来事では、新疆ウイグル自治区での核兵器実験を挙げた。一方、不正確な点も多い。例えば「中国ではイスラム教経典・コーランの指導は違法」と記述されているが、イスラム教は中国で認可された5つの宗教のうちの1つだ。
敵視は中国のみに留まらず、同誌は「イスラム教徒に対して攻撃した米国、イラン、ロシアでは、イスラムの反乱が起き、敗戦の苦汁を舐めることになる」と述べた。また、20世紀にオスマン帝国領が欧米列強諸国に分割された国際協定を認めておらず、この無効化を主張し、パキスタンや東トルキスタン(新疆)を含むイスラム教諸国は、預言者ムハンマドの後継者カリフの権威を復活させたアルカイダ系組織「イスラム・カリフ帝国」の元で生きる、と主張している。
一方、在外ウイグル族リーダーらはアルカイダの呼びかけに否定的だ。英字紙インターナショナル・ビジネス・タイムスの取材に答えた米国亡命ウイグル族活動家は、イスラム過激派の訴えにウイグル族は耳をかさないという。在米ウイグル人協会の指導者アリム・セイトフ(Alim Seytoff)氏は「呼びかけは、失望している若いウイグル族をターゲットにしたものだ。しかしウイグル族の信仰とイスラム過激派では考えを共有しないため、(過激派への)参加はない」と述べた。
米外交専門誌フォーリン・ポリシー8月号によると、「イスラム国」指導者アブー・バクル・バグダーディー氏は7月、中国を含む複数国に対する「復讐攻撃」を予告していた。伝えられるところによると「イスラム勢力は中国(新疆)、インド、パレスチナで強制的に縮小されている」と述べ、同地域での「イスラム国」の勢力を今後5年間で拡大させることを示唆した。
フォーリン・ポリシーは、過激派がもたらす「テロの脅威」は、新疆での権力拡大を合法化する中国当局の口実を作りかねないと指摘する。今のところ、「イスラム国」対策について中国当局は発表していない。