「ハイ、チーズ!」手術室で医師が記念写真 院長ら懲戒処分

2014/12/24 更新: 2014/12/24

【大紀元日本12月23日】「ハイ、チーズ!」と記念撮影した場所は観光地ではなく、病院の手術室。張り詰めた空気が漂っているはずが、ポーズを取るなど余裕を見せる医療チームスタッフが写っている。この「記念写真」は22日、中国インターネットに出回り、批判が相次いだ。一方で、医療従事者を擁護する声も上がった。

陝西テレビによると、写真は今年8月15日、西安市鳳城病院で撮られたもの。手術台に横たわる患者に施術中の医師と看護師の側で、別の医療スタッフが腰に手を当てたり腕を組んだりして、向けられたカメラに対してポーズを決めている。

この写真を確認した西安市衛生局は12月21日、病院長の1年の停職と3カ月の減給、副院長の3カ月の減給、麻酔科主任と看護部長に降任の懲戒処分にした。

手術室でのリラックスに非難轟々 

「医師のモラルはどこへ行った」「手術はまだ終わっていないのに記念撮影? 患者の身体を見せびらかすなんて…」 写真を見たネットユーザは不快感を爆発させた。怒りの声はミニブログ・微博で一気に拡散し、この写真について最初に報じた陝西テレビ21日付の番組は5200万回閲覧された。

近年、中国では患者と医師との信頼関係の崩壊が取り沙汰されている。治療に不満を持った患者や家族が医師や看護師を襲撃し、殺害する事件もたびたび発生している。英医学誌『ランセット』は中国の医療現場のトラブルは凶暴化し、職業としての医師は危険な立場に置かれていると伝えている。

医療不信は中国医療が抱える問題が背景にある。中国では医師の社会的地位や収入も低いため「医療の質」が高まり難い。また市場経済化により、医療現場でも人命救助より利益追求が優先され、不用な手術を施されたり、貧困層へのずさんな医療措置などのケースも報道されている。これらの事情から、今回出回った一連の写真は怒りの声を煽った。

医療従事者から擁護の声 古い手術室で最後の手術

患者がまだ手術台に横たわる手術室。医療チームの表情はリラックス。写真2(weibo)

一方、この医療チームの態度を擁護する声もある。浙江省援疆の外科副主任医師を自称する微博ユーザ『白衣山猫』は、非難がやまない問題写真を伝えるメディアの報道姿勢について「専門知識のないメディアが医師と患者の関係を悪化させた」と指摘する。

『白衣山猫』は写真から手術の事情を読み解く。写真1について「執刀は終わり2人の助手が縫合中」。写真2は「全ての作業が終わり、患者は病棟にまもなく帰るところ。難しい手術を終え、患者の無事が確認でき、医師らは家族同然に喜んでいる。手術台近くで記念撮影も悪くない」「医師らは困難な病例や高度な手術の場合、写真を取り記録するのはよくある」「メディアは善意を持ってこの事を報じてもらいたい。医師と患者の関係を壊さないでほしい」と訴えた。

『白衣山猫』の意見は多くの医療従事者から支持を得た。しかしながら患者の身体が写ったものが、病院内の関係者だけでなく広くインターネットに流出し、メディアに次々に転載されたことは残念だと加えた。

手術室の笑顔の真相

西安衛生局はこの「記念撮影」に関して、「古い手術室を閉鎖し、新しい手術室に移る最後の日の記念」として撮影されたと明かした。またこの騒動の後、北京青年報は鳳城病院の手足外科部長で実際の手術に係わった鄭暁菊氏を取材し、はじめて医療チームの笑顔の真相が明らかになった。

患者は工事現場で働く40代男性。左足に神経断裂の大ケガを負っていた。手術は真夏にエアコンのない古い手術室で行われ、7時間半という長丁場。男性の家族は足の切断の可能性を心配していたが、スタッフの休憩なし、飲食なしの施術の結果、足の切断は免れた。

手術成功の喜びと古い手術室とお別れの意味で、医療チームは思わず「記念撮影」したという。取材中、鄭部長は医療チームの努力を思ってか、涙を流しながら事情を説明した。

涙ながらに「記念撮影」の背景を語る鳳城病院の手足外科部長・鄭暁菊氏(スクリーンショット)

(翻訳編集・佐渡 道世)

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