【大紀元日本3月12日】香港メディアのアップルデイリー・ウェブ版は9日、香港空港内で本土からの男性利用客が持参した炊飯器でご飯を炊いていると映像付きで報じた。この自己本位な行動はインターネットで話題になり、嫌悪する声が香港を中心に上がった。一方、中国国内メディアは「マナーの悪い本土人」との批判を避けるため、同情を請う男性の「苦労話」に美化させている。
香港では、際立つ本土観光客のマナーの悪さや、「爆買い」など買い占め問題が生じることから、訪問拒否を訴える抗議デモが起こるほど印象が悪化している。一方で中国メディアはこの男性を擁護する報道に終始している。10日から、この男性の貧しい境遇や家族事情など扇情的な記事を相次いで掲載した。
本土メディアは「空港で米炊き」事情を次のように報じた。山東省出身の呉加永さん(46)は、病床の両親と大学生の娘を養うため、地元の海外労務仲介業者を通じてシンガポールへ渡航。現地の会社へ入社したものの、何らかの事情で月給2500元(約4万8000円)の未払いが生じ、辞職。まもなく帰国手続きをとった。
シンガポールを発ち、香港で乗り継ぐ際、時間を間違え予定の便に乗り遅れた。空港内で途方に暮れる呉さんの所持金はわずか200元(約3800円)。物価の高い香港では買い物を渋り、次の飛行機を待つ間、持参の炊飯器で米を炊き、腹を満たしていた。
立ち込めたご飯の匂いと炊飯器をけげんに思った空港利用者が、この様子を撮影し、インターネットに上げた。呉さんの画像は注目を浴びた。
無事に帰国した呉さんは本土メディアの取材で、「食事や宿泊、フライト変更の手続きなどで、空港で(取材に来た)香港の記者らに色々助けてもらった。本当に感謝している」と述べた。
「苦労話」に美化させたメディアの戦略は成功している。呉さんの行為や境遇に対し、中国ネットユーザーの間で「可哀想」「恥ずかしいことだが、それは人生」など同情するコメントが圧倒的に多いからだ。
一方で、「火災を引き起こす可能性がある、危険な行為」「空港でご飯を炊くなんか明らかにおかしい」「マナーの悪い行為だが、メディアの宣伝で人生賛歌に変身」と真髄を見ぬいた意見もある。