【大紀元日本3月24日】 編集者注:1989年の学生民主化運動「六四天安門事件」から今日まで、中国では一連の重大事件が発生し、未曽有の変化が起きた。しかも、それは引き続き、中国、ひいては全世界に長期かつ強い影響をもたらしている。こうした中、中国政府は巨大市場を餌食に外交ルートを通じて、各国政府、報道機関、企業及び投資家に圧力を講じ、国際報道機関に対し、「極めて敏感な事件」の真相を伝えないよう報道自粛を迫ってきた。それにより、国際社会が中国情勢を適正に判断できず、関わり方を間違ってしまい、歴史的な機縁を失ってしまう恐れが生じている。
今年2月18日、大紀元香港支社の郭君支社長は東京新宿の京王プラザホテルで講演会を開いた。中国情勢のキーポイントとなる問題を解説、激変を遂げる中国が日本及び香港にもたらす影響を分析した。本サイトはその講演の全文の和訳を連載する。
以下はその第一部である。
世界で直近の20年間、ある話題が盛り上がっています。すなわち、21世紀は「太平洋世紀」になるということです。過去の200年あまりの間、世界文明の中心は欧州から後に米国に移ったため、20世紀は「大西洋世紀」となりました。私個人の認識は、アジアが欧州に取って代わるのはまだ時期尚早で、太平洋世紀がどれほど早く訪れるかは未知数ですが、世界が一つの中心から複数の中心に変化する中、太平洋周辺地区は確かにますます重要になります。
太平洋周辺諸国のうち、最も重要なのは中日米の3カ国です。その関係の行方は、いわゆる未来の「太平洋世紀」の到来の時期を決めます。
現代の地域政治の視点からみると、中日両国の関係はきわめて重要です。中国共産党政権発足後、最高指導者の毛沢東氏や_deng_小平氏は日本に協力する方針を執りました。中国からみれば、両国の関係はもっとも重要な外交関係の一つであるからでしょう。中国外交部の歴任トップのうち、大半は駐米中国大使経験者で、一部は駐日中国大使(公使)経験者であることからも概ね説明がつきます。
一.最高指導者習近平氏就任後の中国の対日関係の位置付け
江沢民体制の後半から、日中関係に問題が生じ始めました。この変化を説明するには、まず中国内部の政治動向から解説します。
1._deng_小平氏の改革開放政策実施以降のここ30年間、共産主義のイデオロギーは中国で完全に喪失してしまいました。社会全体において、仁・義・礼・智・信という古くから伝わってきた伝統的な価値観は破壊された上、共産党理念も信仰されなくなったため、核心的価値観はなくなったままです。中国のような巨大社会にとって、これは致命的なことで、このような社会の結束は、プロパガンダに頼るほかありません。こうした状況の中、民族主義がプロパガンダの印籠として登場しました。政治レベルになると、民族主義が国家主義に変異する可能性が高く、すなわち、政治、経済、人権、自由などすべての分野は国家利益に服従することを強いられます。
肝心の問題は、民族主義には「敵」が必要です。不幸にも、中国最高指導部にとって、日本は最適な選択肢です。米国は地理上離れすぎた上、強すぎます。ベトナム、フィリピン、インドは小国であったり、中国にとって政治的影響が低いなどの理由で外されています。日本は国の規模や、中国との歴史上のあつれき関係、米国の同盟国であるなど、諸条件が適しているため、「仮想敵」として仕立てられました。そのうえ、尖閣諸島の領土問題なども絡み、中国人は「日本を恨むのは至極当然なこと」と認識しています。
2.共産党文化の核心は「国民に怨恨感情を植え付けること」。文化大革命中に全国で上演し続けた8つのプロパガンダ劇大作は、国民に敵への怨恨を吹き込むためでした。共産主義が中国社会のイデオロギーを主導していた時期に、「特定の階級への怨恨感情」を強調していましたが、国家主義が主導する現在においては、それが「特定の民族への怨恨感情」に移行しました。
怨恨は一種の情緒であり、時には理由もなく生じてしまいます。怨恨感情を含め、人類の情緒は長く持続することが可能で、その生じる理由すら消えても未だに保たれている場合もあります。しかも、情緒は社会に蔓延することもあり、怨恨も同じく、時には人々が恨むための根拠を無理に探り出そうとします。中国社会の普遍的な反日感情はまさにこれに当てはまります。
3.今年9月、北京で「抗日戦争勝利70周年を祝う」初の閲兵式が行われる予定です。なぜこれまで行われなかったのかと、多くの人は疑問を抱いているでしょう。
共産党政権が極度な自信喪失に陥っているためです。まさに前文で論じたように、民族主義と国家主義が共産主義にとって代わって中国国内の核心的価値観になった今、抗日戦争の勝利は政権にとって絶好のアピールポイントです。過去20年の間、中国共産党と国民党は互いに、自分こそが抗日戦争を率いた勝者と言い争っていましたが、近年、その論争は「だれが抗日戦争を率いたのか」に変わりました。
こうした中、最近、中国政府系メディアは抗日戦争時の国民党の将官を批判する記事を相次ぎ掲載、台湾の国民党側もこのアピールポイントを勝ち取ろうとしています。一言でいうと、双方とも民意を得るためです。
4.共産党専制体制の継承に構造的な欠陥があります。継承の合法性が乏しいことから、内部及び社会の問題を引き起こしています。その運営の過程においても、最高指導者が絶対的主導権を握るのがとても重要なことで、主導権が弱まっているときに、国民の結束を高めさせるため、最高指導者は必ずといっていいほど、対外に強硬姿勢を示します。逆の場合、内部の不安定要素を十分に制御できる時には、余裕をもって外交関係に対処します。
以前、毛沢東氏や_deng_小平氏が日本に対して温和な態度をとったのも、強い主導権を握っていたからです。
こうした理由から、中国共産党政権の内部に不安が生じ、権力闘争が激化する時期に、往々にして対日関係が冷え込みます。
私個人の認識では、中日関係はアジア(主に東アジアと東南アジア)諸国の今後の発展の動向を決めてしまいます。両国は、政治と経済の協力だけではなく、文化、芸術、哲学、文学、文化心理学、歴史研究及び科学などの多分野で連携を深めるべきです。しかも、政府レベル、または政府主導の民間レベルに留まるべきではありません。
協力するには、まず和解しなければなりません。しかし現状では、全面的な和解は恐らくとても難しいでしょう。実現するには、中国がもっと寛容的な社会環境、もっと自信のある国民文化などを築かなければなりませんが、これらすべては共産党専制体制下では不可能なことです。
(続く)