中国天津での大規模爆発に関して、現場の危険物倉庫を保有する企業をバックアップしているのは最高指導部高官だという情報が後を絶たない。こうした中、公安部主導の調査チームが18日に結成され、検察側も捜査に乗り出した。中国では、異例ともいえる厳重な捜査態勢である。
発生後、中国当局は倉庫を保有する「瑞海公司」の経営陣10人を拘束した。一方、「彼らは会社登記簿上のみせかけの人物に過ぎず、本当の黒幕は最高指導部メンバーだ」との情報が、国内のインターネット上に相次いで投稿されている。
国営新華社通信が拘束中のメンバーのうち5人を取材し、経営陣をめぐる複雑な人間関係について19日に報道した。それぞれ55%と45%の株を保有する2人は名義貸しの株主だと主張しており、実質株主と認めた別の2人は、天津港公安局元局長の息子と、一般家庭出身で会社社長という41歳の男性。
近所の住民の話では、男性一族はそれほど裕福ではないという。各自の人脈を駆使して会社を設立できたと説明した同2人だが、疑惑は深まる一方だ。ネット上では「なぜ名義貸しの必要があるのか」「闇はもっと深い、最後まで追及すれば大トラにたどり着くか」とユーザーたちは納得していないようだ。
倉庫は、国の重要工業開発区である天津市浜海新区、天津港の中心に位置する。天津市政府機関の元幹部で、中国と天津市の政治に詳しい張煒氏(英国ケンブリッジ大学経済学部の講師)は英BBCの取材で、「これほど低いクラスの幹部が、このような重要な地区に、しかも住宅地に密接する場所で危険物倉庫の経営許可を得るのは至難だ」と指摘し、最高指導部高官の黒幕説は否めないと述べた。
香港紙「蘋果日報」が掲載した北京在住の学者・章立凡氏は「中国特有の政治的事情から、これほど危険性の高いプロジェクトに、一般人は関われるはずがない。強い政治的権力が裏で動いているのは確実だ」と記した。
米華字ニュースサイト・博訊網は匿名情報筋の話として、同社の実質的な総責任者は張高麗副首相の親戚であると報じた。
爆発発生後、18日までの8回の記者会見で、天津市政府は記者の質問攻めに対し、同社の実質的経営者の正体を一向に明かしていない。
政府筋の発表では、同倉庫で猛毒のシアン化ナトリウム700トンを保管、2回目の爆発の威力はTNT火薬21トン相当、19日までの死者は114人となった。ネット上では実際の死者数は数千人に上るとする書き込みが多く見られる。
18日、公安部主導の事故原因調査チームが結成され、中国最高人民検察院も捜査を開始すると発表した。従来の慣例では、重大事故の調査は公安部ではなく、国家安全生産監督管理総局が主導で、検察も調査結果が出てからはじめて介入する。今回の対応は、中国国内では極めて異例だ。
(翻訳編集・叶子)