ミャンマーで8日、4年前の民政移管後初となる総選挙が行われた。アウン・サン・スー・チー氏が率いる最大野党の国民民主連盟(以下、NLD)が総選挙に参加したのは1990年以来実に25年ぶり。選挙管理委員会が発表したこれまでの開票結果ではNLDの圧勝が確実視され、NLDも政権交代に必要な議席を確保できたと表明した。与党・連邦団結発展党(以下、USDP)は選挙の結果を尊重すると示し、敗北宣言を出した。
選挙管理委員会は9日午後から正式な開票結果の発表を始め、すべての議席が確定するには、10日以上かかるとしている。
今回の選挙は事実上、与党USDPと最大野党NLDとの戦いとなった。軍事政権の後釜であるUSDPが軍部用議席として25%の議席を保留していたため、選挙では残りの75%の議席を争うことになっていた。そのため、NLDが与党となるためには、そのうち67%以上の議席を確保する必要があるが、同党の幹部は9日、自主集計の結果として同80%以上の議席を獲得したと宣言した。
一方、有権者の間では、USDPが選挙結果を受け入れないのではないかと心配の声も上がっていた。こうしたなか、国防軍のミン・アウン・フライン総司令官は、今回の結果を真摯に受け止めると表明した。1990年の総選挙の際は、NLDが圧倒的勝利をおさめたものの、軍事政権が承認を拒否。スーチー氏はその後約20年間の自宅軟禁生活を強いられたが、同総司令官は、以前と同じ過ちは繰り返さないと述べた。
アメリカ国務省のダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当次官補は、ミャンマーの総選挙を歓迎し、選挙結果はミャンマー国民の勝利だと述べた。しかし、経済制裁の緩和については今後の進展を見極めてから決めるとし、USDPに対し選挙結果を受け入れるようけん制した。
10数年もの長きにわたり度重なる軟禁生活を強いられてきたスーチー氏は、2010年に自宅軟禁を解除され、2011年からは民主的な選挙の実現に向けて政治活動を再開した。2012年4月1日に行われたミャンマー連邦議会補欠選挙では、同氏率いるNDLが45議席中43席を獲得して圧勝を収め、自身も議員に当選した。
スーチー氏の非暴力主義で民主主義を勝ち取るという手法は、民主主義諸国からの関心と支持を得ており、1991年にはノーベル平和賞を受賞している。今回の総選挙について、EUが100人規模の監視団を派遣した。
現行のミャンマー憲法の定めでは、家族が外国籍であるスーチー氏は大統領に就任できない。そのため、NLDが選挙で勝利すれば、党首である同氏ではなく、ほかの党の幹部が大統領になる。このことに関して、同氏は、「それなら自身の立場は大統領より上になる」と発言したが、一部では批判の声も聞かれた。
USDPの副議長は9日、事実上の敗北宣言をした。今回の選挙はミャンマーの民主化にとって歴史的な節目となったと評価されている。
中国ネットユーザーも今回の選挙結果に大きな関心を寄せている。あるユーザーは「この世の正しい道のりは民主主義であることを、ミャンマーの人々が教えてくれた」とコメントした。
(翻訳・桜井信一、編集・叶子)