中国国内メディアによると、習近平国家主席は10日、政府の財政経済の方針を決める会議のなかで、不動産在庫の処理をうながしていたことがわかった。これは2013年以来2回。中国ではゴーストタウンなど不動産市場の在庫問題が深刻化している。習政権が本腰を入れて問題解決を図ろうとしており、新しい政策を導入するとの予測もある。
不動産問題に本腰
習主席は会議で、不動産市場の持続可能な成長のために、過剰供給を減らすべきと指摘し、不動産在庫の解決をうながした。
習主席による不動産問題の対策指示は2013年以来2回目。前回は、習主席は中国本土の不動産市場に対して「健全な住宅供給システムを早期に確立するよう」指示していた。
また習主席は、これまで戸籍で差別された出稼ぎ労働者の農民戸籍を、都市戸籍へ切り替えさせる「戸籍制度改革」を進めることにも触れた。
李克強首相も翌11日、「戸籍制度改革」のペースを速め、戸籍差別により住宅が買えない出稼ぎ労働者にも購入資格を与え、「住宅や家電等の消費需要を拡大させる」と発言した。
連続2日、上層部が不動産市場の方向性に言及したことは、不動産の巨大在庫の深刻さが十分認識され、当局が新の刺激策を公表するだろうと読み取れる。
民生証券研究所の管清友執行院長は、習主席の発言は不動産市場の今後の方向性を示すと分析。短期的な目標は不動産在庫の解決であり、長期的な目標は不動産業界の持続的発展だという。
住宅建築の内部事情に詳しい関係者は、業界に解決をうながす中央政府が不動産在庫問題の具体的な政策を近く公表し、「来年の不動産政策はより緩和される」と予想した。
中国新設都市 5年間で東京都区部15コに相当
中国では、2009年から2013年の5年間で、全国の市街地の建設面積が9700平方キロメートル増加。これは東京都区部(623平方キロメートル)15コの面積に相当する。
中国統計局の調査によると、今年1月から10月までの不動産在庫面積は6億8632万平方メートルと歴代の記録を更新。9月末に比べて2122万平方メートル増加した。
中国不動産住宅研究会副会長・顧雲昌によると、在庫面積とは完成済みの物件を指すが、施工中で、すでに販売が始まっている物件の面積を加えると、7億万平方メートルに達するほどの数値となる。
GDP稼ぎのゴーストタウン問題が深刻化
今回、習主席が会議で述べた、住宅の「供給過剰を減らすべき」とは、中国で深刻化するゴーストタウン問題を食い止めたい狙いがあると見られる。
ゴーストタウンが作られた理由には、出世欲の強い地方政府トップが自分の実績を作るために、管轄地域のGDPを伸ばす目的で、無謀な不動産開発を行っていることがあげられる。当局の統計によると、2014年の中国GDPのうち12%は不動産開発によるものだという。
長江日報メディア集団傘下の経済紙・投資時報が11月17日に発表した中国国内調査の「鬼城(ゴーストタウン)ランキングトップ50」では、内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、甘肅省の中小都市が名を連ねた。トップ10の都市人口は、1平方キロあたり2000人~3000人程度となる。
(翻訳編集・山本アキ/佐渡道世)