中国国内オンライン金融(P2P)大手「e租宝」(eZubo)をはじめとする違法な資金集めや詐欺事件が相次いで発生しているため、中国共産党指導部は社会的不安につながり、政権を脅かす一因となることを警戒している。2月15日付香港紙「南華早報」が報じた。
報道によると、1月に中国公安当局が行った電話会議において、当局の幹部は違法な資金集め事件の頻発によって、今年6月に満期を迎える多くの投資プロジェクトがほとんどデフォルト(債務不履行)になる見通しであると指摘した。情報筋の話として上層部は各地の公安局(警察署)に対して(デフォルトの急増で)社会不安が強まることに対し警戒するよう求めたという。上海の警察当局関係者は同紙に対し、上層部からの指令を受けており、不法なオンライン融資プラットフォームを閉鎖するほか、密な監視を強化し不法行為の疑いのある業者をタイミングよく取り締まることを徹底的に行うと話した。
中国当局指導部はオンライン金融業者のデフォルトの多発で、当局のオンライン金融業界に対する不十分な監督管理に、被害者による抗議の動きが広がるのを危惧し、金融業界の安定化を今年の重要任務と位置づけした。中国保険監督管理委員会(保監会)はすでに国内保険会社に対して不法行為の疑いのあるP2Pプラットフォームを通じて保険販売とその他の投資行為を禁止する伝達を下した。また昨年12月、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も各P2Pプラットフォームの自らの資金集めと資金の貸し借りの禁止を決定した。
中国当局は昨年12月にe租宝の会長を含む幹部21人を投資詐欺で逮捕した。その後国営メディアが、同社は完全なねずみ講で、投資プロジェクトの95%が詐欺だと報道した。e租宝は全国31省と市で約90万人の投資者から500億元(約8800億円)の資金を集めた。投資家の資金はほぼ回収不能だとされている。
自由アジア放送(RFA)によると、e租宝の詐欺事件発覚後の12月14日、一部の投資家が、e租宝の資金募集コマシャールを3つのチャンネルで放送した国営中央テレビの本部前で、同テレビが詐欺に加担したとして抗議活動を行ったが、多くは鎮圧にあたった警察に連行されたという。また12月22日、南京、上海、厦門、武漢、青島など34の都市に住む投資家がそれぞれの地方政府や陳情部門などで、「お金を返せ」、「民衆を騙した」、「中央テレビに騙された」などの横断幕を挙げて抗議活動を行った。しかし、上海、南京、蘇州と南通の投資家の抗議活動は警察当局に鎮圧され、多くの人が負傷し、当局に拘束されたという。
2013年から急速に拡大したP2P業界全体の30%にあたる約1000社の会社は経営不振で、倒産の清算が必要であると銀監会は指摘した。1月1日~25日には、すでに97社が不法行為の疑いや経営不振で倒産し、約100万人の投資者が被害を受けた。
国内メディア「財新網」はこのほど、昨年1月から8月までにP2P会社による違法な資金集めの摘発事件が約3000件に達し、被害額は1500億元(約2兆6500億円)を上回り、頻発する違法事件の被害額規模と被害者数は過去最も多く、結果的に社会的集団抗議事件に発展する恐れがあると警告した。
(翻訳編集・張哲)