観光産業の国際機関・世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の調査によると、2015年、中国本土からの海外観光客が使った金額は2150億ドル(約24兆3000億円)で2014年比53%の激増、過去最高を記録した。中国は、世界で最も海外旅行産業にお金を使う国となった。
さらに、WTTCと中国国家旅遊局の統計では、2015年、中国人の海外旅行の回数は1億2000万回に達し、世界中の外国からの観光客の10人に1人が中国人になる計算だ。
WTTCのデビッド・スコーシルCEOは「中国経済は減速傾向にあるが、本土からの海外旅行客は驚くほど増加」「株式と元の変動で波はあったものの、観光旅行の成長を遅らせる要因にならなかった」と英フィナンシャル・タイムズの取材に答えた。
2015年、中国人に一番人気の外国旅行先は日本で、499万3800と前年比107%増。消費額はおよそ1兆4200億円で関連収益は49%。スコーシルCEOによると、海外消費の特需が大きかったのは日本で、円安による買い物のしやすさが中国人旅行客を招いたと指摘した。
人民日報が1月に伝えた中国商務部の発表によると、海外消費の1人当たりの平均額は28万3800円、そのうち5割が買い物。
初めての海外旅行は近距離の日本や韓国、タイ、ベトナム、オーストラリアなどアジア・オセアニア地区が多いが、2度以降は長距離旅行となるヨーロッパで、イギリス、ドイツ、アイスランドへ行く傾向にある。また、初めての海外旅行や年配層は団体旅行を好むが、インターネットで情報収集できる若年層は個人旅行が増えているという。
国際調査会社ユーロモニター・インターナショナルが10日に発表した調査によると、中国人の海外旅行客増加は、受け入れ国の体制が整えてきたことで「ビザ緩和や銀聯カードなど中国企業のクレジットカードの取り扱い店舗・ATMの増加、中国語対応可能な店員の配置など」が後押ししたと指摘した。
台湾、香港、マカオは減少
一方、香港、台湾への本土客観光収入は下落した。WTTCの報告書は「現地状況による原因」とし、詳しい説明はない。台湾・聯合報によると、台湾の多くの旅行業者は、本土から、団体ツアー客数の制限の通告を受けたという。
昨年香港では、市民デモが繰り返されたり、マナーや慣習の異なる中国人観光客や香港在住の中国本土出身者を狙った過激な抗議運動が頻発していた。罵声を浴びせるなどの嫌がらせはメディアに大きく取り上げられた。一部の香港過激派による「追い払い」などの過激な行為が香港のイメージ悪化につながり、旅行を避けられる傾向にある。
マカオも2015年の旅行収益は激減した。中国政治の「腐敗撲滅」運動により、贅沢禁止令、マネーロンダリングやカジノの取り締まりで、マカオ入国客は3分の1まで減少した。
また、外国旅行ムードが賑わう一方、海外から中国への旅行客は3%の微増にとどまった。
(翻訳編集・佐渡道代)