2月初旬に起きた、バングラデシュ中央銀行(以下、中銀)の口座から8100万米ドル(約90億4600万円)が盗まれるというサイバー窃盗事件で、中国人犯行グループが関与している疑いが強まっている。
2月5日早朝、犯人のハッカーは他の銀行口座への送金に必要する認証情報を使って米ニューヨーク連邦準備銀行(FED)に対し、同行にある中銀の口座からの送金を依頼した。FEDは依頼に基づき8100万米ドルをフィリピンのリサール商業銀行(RCBC)にある4つの口座に送った。
3月29日に開かれたフィリピン上院の公聴会で、問題の送金先口座は、事件発生の9カ月前に中国人2人がRCBCで開設したものだったことが明らかになった。ウォールストリートジャーナルの翌30日の報道によると、事件に関与したとして取り調べを受けた重要参考人の男は公聴会で、真犯人はそれぞれ北京とマカオ在住の中国人であり、自分は彼らの口座開設の際に通訳を請け負っただけだと無実を主張した。
一方、RCBCの弁護士は、たとえ不正書類によって開設されたことが証明されたとしても、守秘義務のため4つの口座に関する情報を開示することはできないとしている。
後の調査により、中銀は以前にハッカーから侵入されたことが判明、送金に必要する認証情報が盗まれたとみられる。当局はすでに米連邦調査局(FBI)に捜査への協力を依頼している。
バングラデシュ最大の金融経済新聞、フィナンシャル・エクスプレスは中銀職員の匿名証言として、盗まれた現金はその後少なくとも3カ所のカジノに流れ、資金洗浄されたと報じた。フィリピンの反マネーロンダリング評議会(AMLC)は先週、前出の重要参考人とカジノ事業を手掛ける中国籍の男1人を、同国の反マネーロンダリング法に違反したとして起訴した。
モスクワに本社を置くコンピューターセキュリティー会社、カスペルスキーが2015年に発表した報告書では、ロシア、中国、ヨーロッパのハッカーが国際ハッカー集団を構成し、銀行に対するサイバー窃盗を繰り返していると指摘された。13年末から約2年間だけでも、30数カ国で100以上の銀行や金融機関がハッカー攻撃を受けており、被害総額は10億米ドル以上に上っていると報告しているが、同社は、調査を依頼された銀行とは守秘義務契約書を締結しているため、被害を受けた銀行名を明かすことはできないとしている。
(翻訳編集・桜井信一、叶子)