昨年から、スペインやイタリア、イギリス、アメリカなどの欧米諸国が、相次いで各国に進出する中国系銀行の支店に対してマネーロンダリング調査の強化に乗り出している。その背景には中国が国際的なマネーロンダリングセンターになっているとの国際社会からの疑いが深まっているからだ。3月28日付米AP通信が報じた。
AP通信は中国が国際的なマネーロンダリングセンターとなっていると指摘した。中国人だけではなく、世界各国の犯罪組織や個人が中国の国有銀行大手、輸出入プロジェクトと違法な資金振替(いわゆる闇金融)などの手法でマネーロンダリングを行っている。これらのマネーロンダリングが合法的に見える上、中国政府当局からの黙認を受けている可能性があると厳しく指摘した。AP通信の取材に応じた元詐欺犯罪者はこれまでだまし取った資金の90%が中国本土と香港を経由してマネーロンダリングを行ったと証言した。
報道によると、米国連邦調査局(FBI)の調査では2015年以降詐欺犯罪者が企業の社長や幹部と偽って欧米諸国の企業から莫大な資金をだまし取る事件が急増した。すでに解決した事案では、だまし取られた資金の大部分が中国本土や香港の金融機関の口座に流れていたという。
今年2月スペイン警察当局は、スペイン人と中国人金融犯罪組織のマネーロンダリングへの加担容疑で、中国工商銀行のマドリード支店の職員と幹部を計6人を拘束した。その後、欧州警察機構(ユーロポール)によると、同支店は少なくとも4000万ユーロ(約51億1500万円)規模のマネーロンダリングに関与したという。
イタリア検察当局も昨年8月に中国銀行のミラノ支店と同行行員4人など中国国籍者297人に対しての、45億ユーロ(約5750億円)規模のマネーロンダリングと脱税の罪で起訴状を請求した。
また、米国連邦準備理事会(中央銀行、FRB)や韓国金融監督当局が昨年から、それぞれの国に進出した中国建設銀行、交通銀行の支店に対してマネーロンダリング対策を強化するよう指示した。イギリス金融監督当局も、同国の中国建設銀行、工商銀行のロンドン支店に対してマネーロンダリングと金融腐敗等の調査を強化した。
中国金融評論家の黄生氏は、4月1日の国内情報サイト「環球之音」で発表した評論記事において、近年中国5大国有銀行をはじめとする中国の金融機関が急速に世界各国で支店を拡大し、また各国の金融機関に出資することが増えたことも、各国政府から警戒される一因だと指摘した。公開資料によると、中国銀行だけでも現在国外29カ国と地域で約600の支店を持つ。世界各国で45の支店を持つ工商銀行も2007年から12年の間に潤沢な資金でインドネシア、南アフリカ、カナダ、アメリカなどの金融機関の株式を購入している。
一方、中国保険企業も同時に海外への進出を拡大している。特に中国保険業に関しては資金源が不明であるケースが多く、その合法性に国際社会から疑問視されている。典型的なケースでは、犯罪組織あるいは個人が犯罪で得た資金で海外の保険を購入した後、直ちに解約することによって、資金が再び中国国内に戻っていくような手口があげられる。
2004年、香港での統計によると、香港の400億香港ドル(約5800億円)以上の年間保険料収入のうちの約3分の1が中国本土からの資金だという。また2003年の香港保険料収入が前年比で突然20%も急増した。当時のアナリストの分析によると、そのうちの一部が中国からの闇資金だという。香港で保険を購入し、直ぐに解約することで資金が本土に戻っていくため、マネーロンダリングが行われていたという。
(翻訳編集・張哲)