世界格付大手のムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は3月2日と31日にそれぞれ、中国と香港の信用格付見通しをこれまでの「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。これについて中国財政部は連日、2社の信用格付見通し引き下げの理由を否定し、中国経済が直面する困難は大きくないと反論。また香港証券当局は報復とも言える行動に出た。
ムーディーズは中国と香港の信用格付見通しを引き下げた理由について、「債務の増加、外貨準備高の減少、経済改革に不確実性の存在、中国本土と香港は経済、金融、信用貸出などの面で密接に関係している」ことを挙げた。
一方、S&Pは「中国政府と企業の債務比率が悪化しており、経済改革のペースが事前予想よりも遅い。政府と市場との間での調整が欠けており、中国本土と香港は経済金融の面において密接に関係している」との見解を示した。
それに対し反論に出た中国財政部は、30日に同部の公式ウェブサイトで「ムーディーズによる、中国と香港に対する信用格付見通しの引き下げに関する理由は不充分だ」と主張した。31日、香港証券および先物事務監察委員会(証監会)はムーディーズに対して1100万香港ドル(約1億5400万円)の罰金を課すと発表。理由として「2011年7月12日、同社が香港市場に上場の49社の中国本土系企業についてレッドフラッグ(警告信号)を付けたことで、関連企業株価が急落したことは香港の証券および先物取引条例に違反する」と示した。
この動きは、ムーディーズが信用格付見通しを引き下げたことに対し、中国政府からの報復だとみられる。2011年7月12日にムーディーズが49社の本土系企業に警告信号を付けた1週間後、同じく世界格付大手のフィッチ・レーティングスも香港市場に上場する本土系企業35社について、企業管理と会計リスクの警告を出した。その翌日、関連企業株価が急落したが、香港証監会はこれまでフィッチ・レーティングスの調査について言及したことがない。
一方、ムーディーズは香港市場に上場する本土系企業に警告信号を付けたのは初めてではないことを示すと同時に、香港証監会が信用格付企業に処罰する権利を有するかどうかを疑問視していると表明した。
現在業界では今後フィッチ・レーティングスがムーディーズとS&Pと同様に、中国と香港の信用格付見通しを引き下げるかどうかに注目している。
(翻訳編集・張哲)