「パナマ文書」の流出で最高指導部の半数以上に汚職・不正蓄財疑惑が持ち上がった中国。このほどスイス連邦のシュナイダー・アマン大統領が習近平国家主席の招きで訪中した際、李国強首相、習近平国家主席と相次いで会談し、腐敗撲滅への協力について言及した。このことで、スイス銀行が北京側に対し何らかの秘密情報を開示するのではとの憶測を呼んでいる。「パナマ文書」の流出は習近平政権に難題を押し付け失脚を狙う江沢民派の策略という見方がある中、今後習陣営が、江沢民前主席がスイス銀行の秘密口座に隠し持つとされる巨額の不正資産を白日の下にさらし、反撃に出るかと注目が集まっている。
スイス銀行に反腐敗の支援を要請
4月7日から3日間で行われたアマン大統領の訪中期間中、李克強首相と習近平国家主席はそれぞれ7日と8日に相次いで同大統領と会談した。
8日午前、同大統領は中国メディア、新浪網の取材に対し、中国で行われている腐敗撲滅運動について、双方が会談や交流のルートを通して協力を進めていくことが重要だとの認識を示し、その目的は、互いに支持を提供するためだと述べている。
この件について、香港メディア「東方日報」は4月11日の論説で、これまで守秘義務を貫いてきたことで知られるスイス金融当局は、北京側へ顧客の情報を開示する用意があるのではとの見方を示し、スイスの銀行に巨額の不正蓄財を行っているとされる中国指導者層にとっての「黄金時代」が終焉に至ると分析した。
中国の腐敗官僚はスイスの銀行にとって最大の顧客の1つに数えられるとし、ある統計によると、中国高層の腐敗幹部や官僚がスイスの金融機関に開設している口座数は5000以上で、預金額は3000億米ドル(約32兆8200億円)を上回る。また、預金のほか、膨大な量の宝飾類や骨とう品なども銀行が保管している、と同記事が伝えている。
「パナマ文書」流出騒ぎの最中に行われた、反腐敗協力についての習・李両氏とスイス大統領との会談は、当局が江沢民派の政局撹乱に対する反撃行動を起こす兆しではないかと、今後の動向が注目されている。
長年にわたる江氏の不正蓄財疑惑
江沢民前主席はその10年以上に及ぶ在任中に、巨大な利益団体のネットワークを築き上げ、国内のエネルギー、電気通信、金融といった主要な産業を含む中国経済の大部分を手中に収めていた。そのため、中国では「汚職のヘッドコーチ」と呼ばれ、その息子江綿恒も「中国の汚職ナンバーワン」との不名誉な称号が与えられている。
米カーネギー国際平和基金のデータによると、中国の党幹部や政府官僚の腐敗汚職による直接的な経済損失は、90年以降1年あたり9875億から1兆2570億米ドル(108兆400億~137兆5300億円)に上るとされ、それに最も「貢献」した人物が江沢民前主席とみられている。
米国のネット雑誌「中国事務」 が以前に、江沢民名義のスイス銀行口座に3億5000万米ドルの秘密預金があるほか、インドネシア・バリ島に豪邸を所有していると報じている。この邸宅の価格は90年当時で約1000万米ドル 。元外相の唐家璇氏が江氏に代わって購入手続きしたという。購入資金は江氏の個人資金とされているが、国から100万米ドルが補てんされた可能性があるとしている。
他にも、国際決済銀行(BIS)によって、02年12月に受け取り手のいない20億米ドルを上回る巨額の中国マネーが国外へ流出したことが明らかになっているが、香港の雑誌「開放」はこの件について、江氏が中国共産党第16回全国代表大会の直前に自ら資産移転を目的として送金したものであると報じている。かつて中国銀行香港支店の総裁を務め、05年に汚職容疑により死刑判決の執行猶予を受け現在服役中の劉金宝氏が獄中で暴露した。中国銀行上海支店の支店長だったこともある劉氏は、今回明るみになったものは、江氏とその家族が行ってきた不正蓄財という巨大な氷山の一角にすぎないとしている。
さらに別の消息筋によると、07年に起きた金人慶中国財政部部長の突然の辞任劇の裏には、江氏が朱鎔基首相の承認を得ず、金氏を通じて国庫から不正に入手した1000億元(約1兆6850億円)をオフショア送金したという背景があったからだという。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)