釈放後も当局に軟禁されている中国著名な人権派弁護士、高智晟氏(52)が監視の目をくぐって書き上げた、自身の受けた拷問の実態などを暴露する本はこのほど、台湾や香港で出版、発売された。米政府に難民として保護されている妻の耿和さんは大紀元本部の取材に対して「この本では穏やかかつ感性豊かな文体で、夫の身に降りかかった筆舌に尽くしがたい苦難、悟った道理が明らかにされている」と紹介した。
『2017年、起来中国(2017年、中国よ目を覚まして)』と題する35万文字の同著書は、台湾の民間団体「関懐中国人権聯盟」と在米の人権擁護団体「対華援助協会」が共同で出版。14日から、香港、台湾で発売されている。
本は3つの部分で構成されている。
第一部は、キリスト教徒である高氏が刑務所で過ごした九死に一生を得るほどの厳しい環境で神の加護を受けたこと、「中国共産党体制は2017年末に必ず崩壊する」という神からのメッセージを受けたことを記している。
第二部は、高氏がこの10年間に受けた、「正常な人間ならまず想像できない」という残酷な拷問の実態を暴露し、「私が刑務所から生きて出られたことは、相手(中国共産党当局)に勝ったことを意味する」と本のなかで綴っている。妻の耿和さんは「いまもこの部分を最後までじっくりと読み通す勇気がない」と辛い心情を吐露した。
第三部は、共産党体制崩壊後の中国の民主主義的政治体制に関する展望と構想を語りつくしている。
本の出版にあたって、耿和さんら家族や周囲は高氏がまた逮捕されるではないかと心配しているだが、本人は「10回捕まるのも、1回捕まるのも私にとっては同じことだ」とまったく動じていない様子だという。 一人娘で長女の耿格さんは「この一冊は父が心血を注いで、命をかけて著したものだ」と語った。
家族の話によると、故郷の陝西省楡林地区の親戚の家に身を寄せている高氏は十数人の警官に交代で監視され、携帯電話の使用も禁止されるなど外部との接触が阻まれている。拷問でボロボロになった歯の治療も受けられないため、いまも流動食しか食べれない。
貧しい農村に生れで、独学で法律を学び弁護士資格を取得した高氏は、2001年には中国司法部の「全国最優秀弁護士10人」に選ばれていた。その後、他の弁護士が引き受けない「政治的に敏感な案件」や、宗教・信仰・人権弾圧を受けた被害者の(無料)弁護を引き受けるなど弱者層を支援。2005年から最高指導部に3回ほど公開状を送り、伝統気功団体・法輪功への弾圧の違法性を訴えて停止を請願した。翌2006年から、秘密里に逮捕、拷問され釈放されるといったことが繰り返されていたが、2014年8月、「国家政権転覆罪」で言い渡された3年間の刑期を終えて出獄。妻の耿和さんは2009年2人の子どもをつれて米国にわたり難民として保護されている。
高氏自身は2008年ノーベル平和賞の受賞候補者と推薦された。米政府は中国政府に対し、高氏への迫害をやめるよう度々求めている。
(記者・梁博、翻訳編集・叶子)