中国人旅行客の日本での「爆買い」はもはや一般的な光景となった。中国人が買い求めるものは日用品から高級品まで幅広いが、このところ訪日中国人旅行者の間では日本のエイジングウイスキーの人気が高まっている。彼らは大都市ではなく、意外な場所でウィスキーを入手していた。
レンタカーを借り地図を片手に、小さな町の酒屋を訪ね歩く中国人の宝探し
フィナンシャル・タイムズの6月9日の報道によると、昨年の訪日中国人旅行者数は2011年の5倍となる約500万人にも及んだ。こうした旅行者の中には大都市ではなく地方の小さな町にやってくる中国人客が増えているという。彼らはレンタカーを借り、地図を片手に地方都市で細々と営業を続けている酒屋あるいは、すでに店をたたんでしまった酒屋を訪ね歩く。目的は日本のエイジングウィスキーだ。中国に持ち帰って「灰色市場(注)」で転売すれば、大きな利ザヤを得られるのだ。
現在、日本の多くの地域では過疎化が進み人口の流失が問題となっている。こうした町に昔からある小さな個人商店を訪れる人は多くはないため、店のすすけた倉庫にしばしば高級ウィスキーが眠っていることがある。このことに中国人が目を付けたのである。
神奈川県の5人の個人商店の店主によると、中国人旅行客には、高齢者人口の割合の高い町にわざわざ出かけてエイジングウイスキーを探すことを専門に行っている人もいるという。
73歳のある店主は、店に残っていたニッカのシングルモルト2本を中国人旅行者に販売したところ、1時間もたたずにうわさを聞きつけた別の中国人旅行者が駆けつけて在庫はないかと尋ねてきたと、中国のウィスキーに対する熱狂ぶりを語った。
大型のリカーショップでもウィスキーの購入者が増加し、3年ほど前からエイジングウイスキーの在庫不足が目立つようになってきた。
シングルモルトのエイジングウィスキー山崎
数あるウィスキーの中でも特に人気の高いサントリーのシングルモルトウィスキー山崎18年は、世界的な酒類コンペティションにおいても数々の受賞歴を誇る極めて品質に優れたウィスキーだが、醸造元のサントリー山崎蒸留所は20年前にこの生産量を決定する際、このウィスキーがこれほどまでに評価されるとは予想していなかった。ましてや、多くの中国人旅行者から宝として求められることになろうとは想像もできなかっただろう。
同蒸留所で製造されているシングルモルトウィスキーの最高峰、山崎25年の販売価格はもはや天井知らずで、東京都内の百貨店や日本国内の空港免税店、インターネット等では700mlのボトルが1本が35万円前後という高値で販売されている。
注)灰色市場とは、正規の仕入れルートではない入手ルートで仕入れた品物を販売する市場こと。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)