国際移植大会、香港で開催 殺人を犯す医師たちが壇上に

2016/08/08 更新: 2016/08/08

2年に1度の国際移植大会が8月18日より香港会議展覧センターで開催される。

中国から疑惑の多い医師たちが演壇に立つこととなり、国際移植学会の倫理の緩みに対する苦情やボイコットが予想される。

 臓器移植源に関する最新調査と国際移植学会の反応

今年6月、中国の700軒以上の病院を精査した結果、中国共産党政権は、良心の受刑者から臓器摘出のために機密で産業化された殺害を行っているとする報告書が発表された。

2000年以来、中国で大量に継続的な臓器移植を可能とした過剰な臓器の提供源についてのイーサン・ガットマン氏、デービッド・キルガー氏、デービッド・マタス氏の調査報告によると、2000年から2015 年にかけて、年間6万〜10万の移植手術が行われており、良心の受刑者が臓器源である可能性が高いとしている。報告書に対する実質的な反論もなく、国際的な臓器移植界の主要人物も、結論の一部にうなずいている。

しかし、グローバルの移植機関である国際移植学会からの反応はなかった。移植界の幹部は特に憤ることなく、移植医療が新しい形態の大量虐殺に使われているという主張への懸念も示していない。今年の臓器移植会議は、中国の医師たちに栄光の舞台を与えてしまっている。

 同会議における倫理性の問題

8月の会議の倫理的問題として次の2点があげられる。1点めは、中国の医師による臨床研究は、非倫理的に入手した臓器を使用している可能性が高いこと。2点めは、無実の者を大量に殺していると譴責されている中国の軍医や移植専門医が、国際移植学会の幹部と同じ壇上に立つことだ。

1)不明瞭な臓器源

大紀元は、中国の医師が発表した50件の要約を検討した結果、少なくとも12件は臓器源の問題に対処していないという結論を出した。

多くの発表には、臓器源に関する情報がほとんどない。例えば、 北京中医学大学の劉紅霞医師の「肝移植のレシピエントの疲労への影響要因」と題する発表では、285件の肝臓の入手時期も入手源も示されておらず、倫理的に摘出されたものであるかを判断することが難しい。

中山大学付属第一病院の王長希医師が発表する「腎臓の同種異系移植生検544件を対象とした病理分析」と、658件の腎移植に関する二つの研究では、2010年初頭からの腎移植を含むとしているが、2009年の時点で、自発的な臓器提供による臓器移植件数は、中国政権の発表によると120件にすぎない。これらの移植の多くは自発的でない臓器摘出である可能性が高い。2005年以降、中国幹部は、臓器源のほとんどは死刑囚のものであるとしてきた。2013年以来、自発的な臓器提供制度が全国的に設置されたが、自発的ドナーからの摘出に関する信頼できる情報はない。

この二人の発表者の経歴も倫理上の問題がある。

劉紅霞医師が2003年に共同執筆した研究発表によると、1999年1月から2002年5月の間に少なくとも60件の腎移植が行われている。これらの腎臓が自発的ドナーのものではある可能性は低い。2000年以降、中国では良心の囚人が主な臓器摘出源であるとされることを踏まえ、統計的にこれらの多くは良心の囚人のものである可能性が高い。

王長希にも同じ問題が存在する。中山大学付属第一病院による医師のプロフィールによると、同医師は700件以上の腎移植を行っているが、中国では自発的な臓器提供制度のない時期にそのほとんどが行われている。他の発表者や共同研究者も同様の問題をはらむ研究を披露するわけだ。

 

 国際移植学会幹部からの回答

国際移植学会の元会長であり、現在は国際移植学会の公式ジャーナルの編集長であり、今回の会議では科学プログラムの議長を務めるジェレミー・チャップマン医師に、発表者の選択過程を尋ねた。以下にメールによる回答を紹介する。

「中国の臓器移植プログラムに詳しい経験豊かな個人から成るグループにより、全ての文書が細かく分析されます…ドナー/移植手術が処刑された囚人からのものである研究は選択されません」

上述の臓器源の問題に対処していない12件の発表の要約をデータベースで提出し、臓器源の実証をどのようにするのか質問したところ、チャップマン医師は自分と同僚は、中国の同僚が医療倫理に適合した臓器源を使用していることを信用していると答えた。中国からの発表者は「三回にわたり文書で」臓器は倫理的に適う方法で入手したことを同会議に確約するよう求められている。

チャップマン医師はさらに次のように加えた。「処刑された囚人の臓器が使われている可能性がある研究は全て拒絶されました。 宣誓文を出すようにという我々の要求に応じなかった研究を全て拒絶しました」 何件の研究発表を拒否したかについての回答はなかった。

2)殺人者が壇上に

臓器の強制摘出に反対する医師団(DAFOH)の理事であるマリア・フィアタロン・シング医師はDAFOHのメンバーである同僚と共に、2016年7月28日、香港での国際移植会議に不服を申し立てた。人間性を侵害する犯罪に長年関わってきた医師が数多く発表者やパネリストに含まれているからだ。

DAFOHは最近のプレスリリースで下記のように発表している。

「国際的な懸念が募るにもかかわらず、国際移植学会は、今年の国際移植会議では、本会議のスピーカーとして移植の専門家である黄潔夫医師が確保されている。黄潔夫医師が中国衛生部副部長として在任中、中国の移植件数は激増した。この増加は1999年以来、法輪功学習者への全国的な迫害と拘束が始まった時期と一致し、法輪功学習者に対する強制的な血液検査と身体検査の報告がこれを裏付ける」

  i )黄潔夫医師

黄潔夫医師自身も、中国でのオンデマンドでドナーを殺害する移植制度に関与する。中国の医療報告書によると、数年にわたり数百件の肝移植を行ってきており、2005年には新疆の病院から緊急電話を受け、24 時間以内に2つの肝臓を入手している。一夜のうちに飛行機で運ばれたが、二人の人間が殺害されたにも拘らず、これらの肝臓は最終的に利用されなかった。

移植倫理学者および医療擁護団体からの圧力で、昨年、8年間続いた黄潔夫医師の豪シドニー大学名誉教授の肩書きの更新が見送られている

中国移植業界の幹部、黄潔夫医師(Song Xianglong大紀元)

ii) 沈(Shen Zhongyang)医師

さらに今回の会議で取り上げられる研究の共同執筆者、沈(Shen Zhongyang)医師は、最も疑問視される医師だ。

天津第一中央病院の移植部門で熱心に手術を行う医師で、彼のこなす大量の移植件数、国際的に業務を宣伝する大胆さのため、かなり注視されている。

天津第一中央病院は、2016年2月に英語版大紀元が発表した調査報告の対象となった病院だ。報告では、死刑囚の数からでは説明のつかない大量の移植件数は、他の臓器源がそれを可能にしていると指摘している。

iii) 鄭樹森医師

鄭樹森医師は今回の会議で「中国で新時代を迎える肝移植」と題する演説を行う。

浙江大学第一付属病院を拠点とする鄭医師は少なくとも数百件の肝移植を行っており、数千件の手術を監視してきた。急性肝不全の患者への「緊急移植」における迅速な肝臓の入手についての2005年の研究を共同執筆している。研究では、臓器摘出を待つ、生存中のドナーの一団が待機していることが、迅速に臓器を入手する上で肝要であることを指摘している。

鄭医師は2007年、共産党が運営する浙江省反邪教協会の議長となり、以来、法輪功を中傷する目的で、学校や政府の職場で講演し、書籍を編集し、賞を授与してきた。法輪功は伝統的な精神修養法であり、1999年以来、学習者は迫害に遭っている。

法輪功学習者の数が党員数を超えたことから法輪功の優位性を懸念した中国共産党は、政治的な敵としてナンバーワンに定義づけ、法の保護なく学習者を迫害したため、臓器狩りの対象になったと調査者は確信している。「臓器狩り」とは、中国の「医療=軍」の複合により、責任免除で行われる収益の高い事業である。

中央は、反法輪功の扇動と宣伝を監督する鄭樹森医師(WOIPFG)

オンライン上の活動の記録によると、中国全域の反邪教協会の法輪功迫害への役割は二つある。法輪功に対する嫌悪を誘発することと、思想再教育におけるカリキュラムとトレーニングセッションを開発することだ。法輪功学習者に信念を放棄させ、中国政権に忠誠を誓わせようとすることが目的で、禁固、党への服従、肉体的な拷問が含まれ、被害者は「悲惨な体験」と描写している。

前述のチャップマン医師と現在の国際移植学会プレジデントのフィリップ・オコネル医師、次期プレジデントのナンシー・アッシャー医師に、同じ壇上に立つ鄭樹森医師に関する別の役割についての調査メモを通達したが、回答はなかった。

 

 倫理委員会・倫理学者の反応

国際移植学会による中国の医師に対する倫理要綱は同学会の幹部により作成されており、 一方では倫理基準を守る義務を掲げ、一方では「処刑された囚人の臓器と組織を利用する以外の方法」に関して中国の医師との「対話を奨励」し、中国の医師を「教育する」という、二つの目標を均衡に保つことを目的としている。

従来、中国の医師は、研究が倫理的に適うものであることを条件に、国際移植学会の会員となり、会議での発表が許可されていた。

この倫理性への配慮は、死刑を宣告された囚人の臓器を使う医師に向けられたものである。鄭医師のように臓器のために無実の者を殺害しているという疑惑も適切と思われる場合はどのような処置をとるべきだろうか?

倫理委員会の議長を務めるビアトリツ・ドミグエズ=ギル博士は次のように記述している。「国際移植学会の基本である倫理的理念を強調したい。処刑された囚人からの臓器摘出を禁じることは、自主的に情報を得た上での特定の摘出に関する有効な合意を示すことのできない、いかなる人間からも臓器を摘出することを禁じることだと理解されるべきであり、良心の囚人もこれに含まれる」

豪シドニーのマカリー大学生命倫理学者ウェンディー・ロジャーズ教授はeメールで次のように語っている。「中国では、倫理的に問題かもしれませんが、合意の上で処刑された囚人から臓器を摘出することは法的に認められています。しかし、中国でさえ、臓器のために人を殺害することは違法であることは明白です。『処刑された囚人』からの臓器摘出に関わる者は倫理性に欠く行為として譴責されるでしょう。しかし『良心の囚人』から臓器を摘出する医師は殺人者です。殺人者とそうでない者の間には倫理的に明確な違いがあります。私の知る限り、あらゆる倫理学の理論がこの違いを明確にしています」

 会議への不参加表明

倫理的に下り坂の国際移植学会は、傑出した会員の支持を失っている。イスラエル移植学会プレジデントであり、国内屈指の心臓移植専門医、国際移植学会の倫理員会のメンバーであるヤコブ・ラヴィー医師は、香港への会議には参加しない。

ヤコブ医師(ドキュメンタリー『知られざる事実』より)

「国際移植会議をバンコクから香港に変更しないように、国際移植学会の幹部を説得しようとしましたが、できませんでした。…良心の囚人から臓器を摘出しているという報告を無視して、中国にグローバルの舞台を与えることは、国際移植学会の倫理規範が傷つくことを意味します。…国際移植大会の科学プログラムにこれほどまで多くの倫理的に疑わしい発表があることは驚くべきことで、自分の関わる社会での道徳の壊を示しています。私は香港の会議をボイコットすると同僚に宣言しました。そして私のあとに続くように呼びかけています」とメールで伝えた。

 

(記者:Matthew Roberston  翻訳/編集:阿部慶子)

 

 

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