中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員会の樊綱氏はこのほど海外メディアからの取材の際、中国の資本流出を肯定するような認識を示し、「今後資本流出が加速する」、「漸進的な元安を容認する」とこれまで当局の方針と違う発言をした。専門家は中国指導部経済金融ブレーンの発言から中国の政治・経済に今後大きな変化があると分析した。
9月8日、中国上海で米国経済ニュース専門テレビ、ブルームバーグテレビジョンからの取材を受けた樊氏は、「中国の外貨準備高の規模は莫大で、元安と重なる今、資本流出に伴う外貨準備高の減少は正常なことだ。この時の資本流出は良いことで、将来資本流出は加速するだろう」と述べた。
中国経済改革研究基金会国民経済研究所長でもある樊氏は、米国金融当局の利上げ観測は高まっており、長期的に米ドルは上昇基調にあり、元は他の国の通貨と同様に下落していくべきだとし、当局は(対ドルでの元為替レートを)適切に管理し、「漸進的な元安を容認する」との見解を示した。
また、中国経済の現状について、「経済の構造的調整はまだ続いており、底入れしたが、回復はまだ見られていない」とした。中国個人投資家の海外金融市場への直接投資について、「規制を一段と緩和し、QDII2(適格国内個人投資家)制度を推進していく」と述べた。
中国当局はこれまで資本流出の拡大を食い止めるために、個人の外貨両替上限量の設定、外資系銀行による元の国際間取引への制限を含む様々な措置を打ち上げてきた。国際金融市場でも、当局は莫大な外貨準備高を資金に、頻繁にドル売り・元買い介入で元の急速な下落を阻止してきた。
時事評論員の李林一氏は、これまでの当局の方針と相違する樊氏のこの発言からみると、中国当局が政治と経済の面で大きな変化を起こす可能性が高いと分析した。
在米中国経済学者の何清漣氏が過去執筆した評論記事は、資本流出の加速で中国の株式市場と不動産市場はマイナス影響を受けるだけではなく、資金流動性が悪化し、企業が資金繰り困難に陥り、企業の業績が悪化することで実体経済が大きな打撃を受けると指摘している。
中国の実体経済の悪化は世界同時株安など、世界経済の混乱を招くことも予想される。中国の資本流出と元安は各国関係者に注目されている問題だ。
ブルームバーグによると、2015年通年で中国の資金流出規模は1兆ドル(約102兆円)に達した。国際金融協会(IIF)の試算では、16年に中国から約5380億ドル(約55兆円)規模の資金が流出するという。
人民銀行の最新統計によると、8月末時点の外貨準備高は前月比で約159億ドル(約1兆6200億円)減少の約3兆1852億ドル(約325兆円)となった。7月末に続き、2か月連続の減少となった。
(翻訳編集・張哲)