一貫して中国政府擁護の報道を繰り返してきた香港随一の親中メディア「成報」が9月28日から今月4日までに、江沢民元総書記の側近、党内序列3位の張徳江全人代常務委員会委員長を痛烈に批判し、解任と責任追及を求める記事4本を連日トップ紙面に掲載した。国内外がこの異例な動きに強い関心を寄せているなか、大紀元コラムニストは江派と対立する習近平指導部の命令である可能性を指摘した。
一連の報道はいずれも容赦のない内容で、香港を主管する中央港澳工作協調小組の組長でもある張氏の「数々の問題点」を指摘した。▼強硬かつ一方的な政策決定が香港社会の対立を深化させ、2014年末に学生ら民主派による大規模な道路占拠運動を誘発した ▼2002~03年、広東省のSARS(重症急性呼吸器症候群)発症情報を隠ぺいしたことで香港および国内外に感染を拡大させて多くの死者を出した ▼本土の腐敗の悪習を香港政界に持ち込んだ ▼香港政界に闇勢力を浸透させた。
記事は張氏を「香港を乱す災いの元凶(災星)」「香港を乱す四人組の一人である」「糞をかき混ぜる棒である」と激しい言葉で批判し、「現最高指導部では江沢民派の代表である張は、絶えず政局を乱し、各種の改革を妨げている」「江沢民は張を庇う黒幕である」と元総書記まで名指して、「香港市民が強く望んでいる」として張氏の解任と責任追及を習近平指導部に「進言した」。
親中メディアが現職の最高指導部高官をこれほどストレートな言葉で批判するのは、中国では異例中の異例であり、内外の関心が一気に高まっている。
大紀元本部のコラムニストは「いまや江派より力が強くなっている習近平陣営の命令がなければ、絶対にこのような報道を出すはずがないし、出すことも許されない」と断じている。この見解を裏付ける情報もあった。米国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は「成報」の報道関係者の匿名証言として、筆者「漢江泄」とする一連の記事は同紙の記者が書いたものではなく、いずれもトップが持ち込んで掲載を指示したものだと報じた。いったいだれが書いたのかは謎のままだ。
こうしたなか、習近平指導部は「成報」を評価した。2本目の報道が出た翌9月30日、中国共産党中央規律検査委員会傘下の雑誌は「反腐敗運動への国際社会の反響」と題する記事で、ウォールストリートジャーナルやフィナンシャル・タイムズなど世界大手メディアと並べて、「成報」の反腐敗を支持する別の記事内容をも引用した。
中国国内の政治ジャーナリストは大紀元本部の取材を次のように分析した。「ここ数年の反腐敗運動で次々と江派の主力メンバーを失脚させてきた習近平陣営は勝つ自信がつき、江・習両派の戦いは最終段階に入ったことを意味する。そうでなければ、政権安定のため、いくら政敵とは言え、現役の最高指導部高官である張徳江氏をこれほど批判するはずがない。近いうちに中国の政治に大きな動きがあるであろう」
(報道・大紀元本部取材班、翻訳編集・叶子)