近年中国で爆発的に成長した「網紅」(インターネット上の超人気者)産業。インターネットで、日常生活や歌、踊り、トークなどを生中継し、ファンを増やしながら、ネット通販企業から巨額な広告収入を得るシステムだ。調査によると、高い収入が見込める「網紅」は、女子大学生のあこがれの職業の一つとなっている。北京ではこのほど、この現代版「見世物小屋」とも呼べる場で活躍する、若い女性パーソナリティーを育成する「工場」が誕生した。
スカウトした女性を共同生活させる育成工場
4日付の中国メディア「新京報」によると、あるメディア会社の担当者である劉威さんは、新たな女性ネット生中継パーソナリティーを育成するには、まず「スカウトマンがネット上で、すでに生中継をしている若い女性のパーソナリティーを探す。その素質を、3カ月またはそれ以上の期間を費やして観察する」「会社側が認定すると、その女の子たちと契約を交わす。
その後、女の子たちを一カ所に集めて、集団生活をしながら、さらに研修を重ねていく」「女の子はそれぞれの部屋を与えられ、携帯電話やパソコンも与えられる」と紹介した。現在、20歳の女性5人が研修を受けており、すでに3カ月に入った。
契約では、女性パーソナリティーの勤務日は週6日、毎日の生中継時間が2~6時間だと定められている。しかし、ネット上のファンの人数を拡大し保持するために、「この3カ月に生中継をしない日が、1日もない」「早朝2時まで生中継をするのは日常茶飯事だ」という。
同メディア会社は育成プログラムに国語研修、ヨガや踊りのレッスンなどを組み、また5人に対してキャラクター設定や衣装のコーディネートを行っている。
5人の中で、ファンから現金に換金できるプレゼントをもらうことやネット通販企業のイメージキャラクターを務めるなどで、月収が10万元(約150万円)の人もいるという。しかし、5人のほとんどは「網紅」が長期的に勤められる職業ではないと考え、将来的にカフェ経営や女優転身と意気込みをしているという。
大卒予定者 約54%が「網紅」が最も憧れる職業
一方で、中国メディア「網易」の7月25日の報道によると、インターネット・サービス大手の騰訊(テンセント)傘下チャットサービス、QQが2016年大学卒業予定者を対象に行った就職関連調査では、約54%の回答者が「網紅」が最も憧れる職業だと答えた。
背景には、中国多くの若者が勤勉かつ真面目に仕事を取り込むという伝統的な価値観から、「網紅」となれば一晩と短時間に有名人になるとともに、大金を手に入られるとの拝金的な価値観に大きく変化したことを挙げられる。中国社会で慌てて成功しようとして目先の利益に勢いよくすがりつくとの考えが、根強く存在するのも反映しているようだ。
(翻訳編集・張哲)