香港特別行政区長官の梁振英氏は9日、家庭の事情で来年3月の次期長官選挙には出馬しないと発表した。中国習近平政権に近い情報筋によると、習政権は、4年間の梁長官のもとで香港社会に大きな混乱が起き、国際的に習政権が批判される要因と考えており、梁氏の来年以降の再任を認めないことを決定したという。
情報筋は大紀元の取材に対して、習近平国家主席と家族ぐるみの付き合いがあり、習氏から深い信頼を寄せる中央政府高官2人が8日夜、香港で梁振英氏と面会し、習氏の「(任期は)ここまでだ」との指示を直接梁氏に伝えた。また、梁氏のメンツを保たせるため、本人から再任しないと発表させた。
情報筋は、梁氏が行政長官に就任してからこの4年間に、香港市民間の対立が深まり、社会混乱が拡大したことに、習政権が強く不満に思っている。さらに梁氏が来年3月以降再任すれば、社会的紛争がさらに激しくなると懸念しているという。
梁振英、習近平政権の敵対勢力・江沢民派の香港勢力でリーダー的存在
梁振英氏は中国共産党内江沢民派閥メンバーの前国家副主席曽慶紅氏の側近で、江派閥香港勢力のリーダー的存在だとみられている。2014年、江派閥メンバーである張徳江氏(中央政治局常務委員)が委員長を務める全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、2017年香港行政長官を直接に選出する「普通選挙」を白紙にした。
これに対して、梁氏の指示の下で香港政府は、強く「普通選挙」を求める市民や学生が行なった、いわゆる「雨傘運動」を、武装警察を発動して強行的に抑え込んだ。「一国二制度」で高度な自治が保障される香港で、このような流血事件があったことに世界各国から非難された。
また今年に入ってからも、梁振英氏の意向で、「一国二制度」による「高度な自治」の危機を感じさせる出来事があった。大紀元のグループメディアである衛星放送・新唐人テレビの香港支社が、7月に予定していた「中国古典舞踊世界大会」の開催に使う予定の劇場の利用契約を一方的に破棄。立法会議員らの資格取り消し。全人代による「香港基本法」の解釈の混乱など。
情報筋は「習氏が国際社会から、中国共産党が高圧な姿勢で民意を抑え込んだと言われたくない」「現在国際情勢がますます厳しくなる中、台湾の蔡英文総統を含めて、世界各国が中国の一国二制度の実施状況を注目しているのを習政権がよく心得ている、だから梁氏の再任を認めない」と示した。
習近平氏 側近の派遣、中聯弁への不信感か
中国問題専門家の石蔵山氏は、習近平氏が梁氏に対して、中央政府駐香港聯絡弁公室(中聯弁)や香港マカオ事務弁公室(港澳弁)などの政府機関ではなく、自らの側近を派遣して再任を断念させたことについて、「江派閥の曽慶紅氏が長年、中連弁などの政府駐香港機関を掌握してきた。習氏が国家主席就任後、公然と習氏に対抗し、習氏の香港関連政策の実施を阻んだ」「中聯弁などを信用できないから、習氏は側近を派遣した」と分析した。
また、中国政治評論家の李天笑氏は、梁氏が再任しないと表明したことで、今後習政権が、中聯弁や港澳弁に残っている曽慶紅氏の勢力を一掃する予測ができると分析した。
一方、前述の情報筋は梁氏退任後の待遇について、不正献金による処罰もありえると述べた。「習氏は新たな職務を就任させないどころか、逆に梁氏が在任中にオーストラリアの企業『UGL』社から5000万香港ドルの裏金を受け取った疑いで調査し、追及して処罰するだろう」。
また、習政権が梁氏や張徳江氏らと深い関係がある「青年関愛協会」(青関会)などの極左団体も一掃されると予想する。青関会はここ数年、香港で法輪功学習者に対して妨害活動を行ってきた運動団体で、2013年7月13日に香港で登録手続きを経て設立された。
(翻訳編集・張哲)