倫氏は、習主席が手中に収めている権力は、中国共産党の専制政治に立脚したものであるため、現時点では、習主席は現体制下で許されていることしかできないと説明している。党の政策方針は、憲法よりも上位にあるためである。また共産党の一党独裁政権においては、全てのメディアは党の代弁者にすぎないので、第四権などというものはそもそも存在しない。
今回、習主席が政治改革を実施するにあたり監察権を成立させ、「習近平を核心とする党中央」という旗印のもとに、四権分立の骨子を作ろうとしているのは、将来的に共産党中央政治局常委という政治管理制度を廃止し、共産党を捨て去り、党機関を解体したとしても、できる限りスムーズに立憲政治へと移行できるよう、現行体制に代わるしかるべき国のシステムを構築、準備することを目的としており、大統領制への移行をも視野に入れていると考えられる。
現行管理体制に加わる5番目の管理構造「監察委」
一般的に、中国現行の管理構造は、1.共産党委員会(トップは党委書記)、2.政府(トップは総理)、3.人民代表大会(トップは人民代表大会委員長)、4.中国人民政治協商会議(トップは政協主席、共産党と各党派の統一戦線組織)の4つの系統からなるとみなされている。
今回、監察委の設立は、5番目の管理機構が出来上がることを表している。構成人数自体に変化がなく、メンバーを中紀委、最高人民検察院反腐敗汚職贈賄総局、検察院などから選抜することに変わりはなくとも、新たに設立される機構は、監督・調査・処置という独立な権限を持つため、先の4つの機構に並ぶ重要な管理機構に位置づけられる。
習主席は中国全土の「去党留政」と無血な体制移行の偉業を成し遂げるか
中国の近、現代史研究者の辛灏年氏は2014年に早くも、「去党留政 」の理論を打ち出しているが、これは「党の看板を取り払い、政府官僚として国を治める」ことを意味している。
辛氏は以前に、習主席に対し公に「党(総書記)、政府(国家主席)、軍(軍委主席)の全てにおいてトップの座に付いている習主席が、中国共産党の解党を宣言すると同時に、この「去党留政」の必要性に基づき、国家主席の職位に留まれば、中国全土において「去党留政」と無血革命を一度に実現するという、大きな希望に満ちた未来を勝ち取ることができる」と呼び掛けている。
さらに「習主席が無血革命の過渡期にある政府をきちんと監督し、正常な外交政策や内政のかじ取りを積極的に行い、無血革命の実施にまい進すれば、習主席は後の民主選挙で初の民選の指導者、つまり未来の中国民主政府の大統領に選ばれることも決して不可能なことではないし、その偉業も、後世にまで称えられることは間違いない」とも発言している。
倫氏は、習主席が行ってきた一連の政治改革から考えると、習主席が現行体制から大統領制に移行させようとしているという話は、決して絵空事ではないと考えている。そして習主席が来年には、政治改革を更に推し進めることも大いに考えられると分析している。
(翻訳編集・島津彰浩)