台湾製造業の生産拠点が、中国から米国に移行する傾向が強まっている。米中両国間の貿易摩擦によるダメージを避けるのが一因という見方がある。台湾の自由時報が報じた。
台湾製造業の主力は相手先ブランド名での受託生産が中心のエレクトロニクス産業(電子産業)であり、その大部分が生産拠点を中国に置いている。伝えられるところによると、複数の業界大手は米国での生産拡大に意欲をみせている。
スマートフォンや薄型テレビなどの電子機器受託生産の世界最大手、鴻海精密工業の郭台銘・会長は1月下旬、米国で初の工場を建設すると発表した。約70億ドル(約7980億円)の大型投資であり、昨年買収したシャープと共同で出資する。
iPhoneの製造業務の一部を請け負う和碩聯合科学技術の童子賢・会長は、必要な場合は米国での生産能力を「3~5倍に拡大する」と示した。
パソコン受託生産の世界大手、広達電脳(Quanta Computer)は今後3年間、米テネシー州とカリフォルニア州にある工場の生産能力・従業員数をともに倍増する計画だ。同社はアメリカのデル、アップル、日本のソニー、東芝、富士通、シャープなどの製造も引き受けている。
電子産業だけではない。ナイキやアンダーアーマーなどの製造を受託する台湾のアパレル大手、儒鴻企業(エクラ・テキスタイル)が中国での生産から撤退し、台湾本土への復帰、ベトナムへの移転を加速している。トランプ政権が優遇政策を打ち出す場合、米国進出もありうると示唆した。
こうした中国離れ&米国進出の動きは、米中間貿易摩擦を想定した戦略転換ともいわれている。
トランプ米大統領は選挙中に中国を「為替操作国」と糾弾し、中国製品に最大35%の関税を課すと発言した。最近になっても見方は変わっていないと述べたことから、米中の貿易摩擦の可能性が高まっている。
中国が第1位、米国が第3位の輸出相手国である台湾にとって、この事態は対岸の火事ではない。経済専門家は「中国から米国への生産シフトは、中国製品の高関税リスクを回避する得策だ」とみている。
(翻訳編集・叶静)