中国では今、ドラッグの蔓延が深刻な社会問題となっている。中国メディアが報じたところによると、麻薬はすでに農村部にまで広まっており、一部の農村では冠婚葬祭で、まるで煙草をやりとりするように気軽に麻薬を勧めあう様子が見られる。
4月25日、中国メディア新京報は、湖南省のある薬物依存のリハビリ病院の職員への取材を通じて、深刻な中国の薬物汚染について報じている。以下はその抄訳。
薬物依存のリハビリ病院に入院して2カ月余りの李剣鋒さん。以前は長沙市で商売を営んでいた。業績もよく、妻は医者で利口な子供がいた。
3年前、李さんは「スリルのある楽しみ」と友人に勧められた覚醒剤「氷毒」に手を出した。見た目は氷砂糖と似ているため「氷毒」と呼ばれるこの人工覚せい剤は、1グラム200元(約3200円)で売られ、電話一本で簡単に手に入るという。
李さんによると、「氷毒」を使うと神経が高ぶり、疑り深くなる。妻の帰宅が数十分遅れただけで浮気を疑い、子供の聞き分けが悪いと、俺の子ではないのかもしれないといった疑念が浮かぶ。さらに、携帯電話に不正アプリがインストールされ、誰かに監視されているのではないかと疑って、機種変更を7回も繰り返した。
李さんは猜疑心の塊のようになっていた。これは「氷毒」常習者の一般的な症状だ、と病院職員は説明する。
新型の合成覚醒剤の中毒は通常4つの段階を経て進行する。1.たまに吸う 2.中毒になり依存する 3.乱用する 4.精神がむしばまれる。
病院職員の話では、以前は麻薬と言えば高価なものだったが、ここ数年で安価なものがどんどん出回るようになり、都市部から農村部に流行が広がったという。
地方によっては目を疑うような光景も
「一部の農村では、冠婚葬祭の時に参加者一同ドラッグをやっている。まるでたばこを勧めるみたいに、互いに気軽に勧め合っている」。地域によっては、麻薬が欲しいと思ったら、電話をすれば30分で届けてくれるのだという。
薬物依存リハビリ病院の院長は統計データから、地方患者が増えていると話す。「入院患者は、以前はほとんどが都市部住民だったが、2015年以降、郷鎮(県級市の末端自治区、田舎)の農村出身者が全体の半分以上を占めるようになり、増加の一途をたどっている」。
2016年2月に国家禁毒(麻薬取締)委員会が発表した「2015年中国麻薬状況調査報告」によると、中国全土で更生施設に登録されている麻薬中毒患者は15年末の時点で234万5000人で、無職の人を除き、農民の占める割合が17.3%と、全ての職業のなかで最も多い。
さらに、中国の麻薬売買の主体を成しているのは、青少年と農民という結果が出ている。
2015年に禁毒委員会が発表した2014年度同調査報告には、2014年末の時点の登録済み麻薬中毒患者は295万5000人だが、実際の中毒患者は「1400万人を超えるとみられる」と記されている。
(翻訳編集・島津彰浩)