今秋の中国共産党・第19回全国代表大会(通常党指導部の入れ替えがある、以下19大)を控え、国家主席・習近平氏と国務院総理・李克強氏は、交互に外遊に出かけ、どちらかが国内に留まるという方針を取っている模様。言いかえれば、それだけ李総理の信任が厚いということがうかがえる。
海外の中国語サイト・博聞社は「中南海消息筋からの情報として、19大を前に、習主席と李総理は反対勢力の動きを厳重に警戒、同時に国を留守にすることを避けている」と報じた。
いきおい慌ただしい日程の外遊を消化せざるをえない。また6月4日(1989年の六四天安門事件発生日)前後は、両氏とも中南海に滞在していた。
7月8日ドイツ・ハンブルグで開催されるG20サミットに習主席が参加するため、すでに予定されていた李総理のドイツとベルギーへの訪問日程を前倒しした。先週も、訪問先から李総理が帰国すると、入れ替わりで習主席がカザフスタンへと出発している。
北京時勢の評論家・華頗氏は、米国の中国向け短波放送・希望の声の取材を受け、「習主席が党内の反腐敗運動で、大勢の高官の『核心的利益』に触れたため、党内部では緊張状態が極限に達している。習主席が核心的地位を確立したとはいえ、19大までは政権内部で何が起きてもおかしくない」と述べた。
習主席と李総理の関係については複数の見方がある。「習主席が絶対的な立場を使って、李総理の総理としての権限を最小限に抑えている」という意見もあれば、「共産党体制下では、総理は元々取りまとめ役程度の『執事』である」という声もある。
しかし軍隊の指揮権を持っていないはずの李総理が、災害や事故現場の救助活動で実際に現場を動かしている。これは明らかに軍委主席習近平のサポートがあったからだ。これと対照的に、温家宝が総理を勤めていた時にはなかったことである。今年3月に行われた第12期全国人民代表大会第5回全体会議の席上でも、習主席と李総理が緊密に連携している様子が伺えた。
一方、米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に4月19日、巨額汚職で国際指名手配となっている郭文貴(米国に逃亡中)が出演、攻撃先を中紀委書記・王岐山氏に向け、物議を醸すということが起きている。
李総理と中紀委書記である王岐山に、19大でどのようなポストが与えられるのかが、大いに注目されている。
(翻訳編集・島津彰浩)