中国では今、ネット詐欺の新たな手口が続々と現れており、被害者の数も急増している。中国メディアによると、ネット詐欺は賭博、性産業に続き中国の一大闇産業と化しており、1, 100億元(約1兆7,867億円)という巨額資金が動いていると見られている。
なかでも、個人情報の収集により闇産業に巨額の利益がもたらされるため、ネット詐欺の手口のうち、ハッキングによる個人情報の窃盗が闇社会で産業チェーン化している。
公開されたデータによると、2015年下半期から2016年上半期にかけて、中国大陸で起きた個人情報漏えい数は60億5000件に上り、そのうち8億6000万件の個人情報が闇社会で売買されていた。全体的な経済損失は約1,000億元(約1兆6,243億円)と見られている。
4月13日には、中国中央銀行決済システム部門の謝衆局長も、インターネットと移動通信技術の発達によって、詐欺の手口がさらに巧妙化していることを認めている。
セキュリティソフト大手のシマンテック社が発表した、2016年インターネットセキュリティの脅威に関する報告書によると、ネットデータのブラックマーケットにおいて、インターネット詐欺を専門的に行っている犯罪者の数は160万人にのぼる。彼らはさまざまな詐欺サイトや、携帯端末にインストールされたトロイの木馬を始めとする不正ソフトを使って、使用者の個人情報を盗んでいる。
謝衆局長は、現在のネット詐欺の手口にみられる新たな傾向を以下のように分析し、警鐘を鳴らしている。
1.正確なデータに基づいてピンポイントに詐欺。正確な個人情報を基に、さまざまな詐欺が行われる。
2.詐欺グループが政策や法律法規の変化を常にチェックし分析を重ね、抜け穴を見つけては新たな詐欺手口を考え出している。
3.詐欺の効率を上げるため、ターゲットを個人から集団へと切り替えている。例えば、QQや微信といったコミュニケーションツールに潜り込んで、権限のある上司の名義を盗用し、緊急の送金指示を出すといった手口が取られている。
4.詐欺グループの送金用口座の開設が、大銀行から中小銀行やその提携機関の支払い部門へとシフトしている。
5.詐欺グループ内で各々の受け持ちが細分化され、作業分担が細かくなされているため、詐欺によって得た金が素早く移転されるほか、詐欺行為が業界や国境という垣根を越え、国際化している。
(翻訳編集・島津彰浩)