中国当局は7月2日、南部・海南島の文昌にある発射場で、最大級推進力を持つ新世代運搬用ロケット「長征5号遥2」の打ち上げ実験を行ったが、「異常が発生した」ため失敗に終わった。6月19日四川省の発射場で「長征3号B」による放送用衛星「中星9A」の打ち上げたが、予定されていた軌道に進入できなった。半月足らずで2回続けてロケットの打ち上げに失敗したことについて、中国国内インターネットでは原因を探るなどの議論が広がった。
中国当局は2日の打ち上げ失敗原因について、「調査中だ」とした。しかし、当局の宇宙開発関係者とみられる匿名の人物はインターネット上で「ロケットエンジン2基のうちの1基が故障し、十分な高度に達せなかった」ことや、「衛星はロケットから分離できず、第2段ロケットとともに墜落した」などの要因を明かした。
中国航天科技集団公司は2001年に、人工衛星打ち上げロケットの「長征5号」の開発を始めた。昨年11月、はじめて打ち上げ実験を成功させたものの、技術面の問題で実験自体は何回も遅延された。中国宇宙航空部門は、今回を含めて2回の実験がともに成功すれば、長征5号の開発を終え、実用化させる計画を立てていた。
中国当局は宇宙ステーション建設や月探査計画(嫦娥計画)や有人月上陸などの宇宙開発に野望を持っている。しかし、7月2日の運搬用ロケット打ち上げ実験失敗で、宇宙空間への物資運送能力がまだ低いことが明らかになった。当局の今後の宇宙開発計画に大きな影響を与えたとみられる。
近年、長征シリーズのロケット打ち上げは失敗の回数が多い。2011年8月18日の甘粛省酒泉衛星発射センターで長征2号丙遥26の打ち上げ、13年12月9日の長征4号乙遥10の打ち上げ、16年9月1日の長征4号丙と長征4号乙も、それぞれ失敗に終わった。原因の多くは、ロケットエンジンの故障だと報じられている。
宇宙開発の内情知る者「向上心がない」「姿勢は不真面目」と吐露
国産のロケット打ち上げがなぜよく失敗するのかについて、中国国内ネット上で、ネットユーザーと宇宙開発部門研究者の間で熱い議論を巻き起こした。
ある一人のネットユーザーは、7月2日の打ち上げ実験は、中国当局が自らの「偉大さ」を誇示するために、前日の「香港返還20周年」記念日に合わせて慌てて実行されたものだと主張し、当局の強い政治的な意図を見てとれると批判した。
中国航天科技集団公司の傘下研究所で4年間務めてきた社員と名乗る一人のユーザーは、研究所内の不真面目な雰囲気や不公平な昇進を嫌うため仕事をやめたいと告白した。
「今の研究員、特に若い研究員は仕事に対する責任感がなく、研究に対する姿勢も不真面目だ…研究レポートを作成するのに、間違いだらけで、仕事もしたくない。…向上心は全くない。これは給料や賃金などの待遇面に問題があるのではなく、若い人たちの道徳心にかかわる問題だ」と指摘した。
「以前、航天部門の研究員たちは仕事態度が非常にまじめで、実験のレポートをまとめる時、内容が明晰である上論理分析も完璧で、さらに結論も合理的だった。今の研究員は自らの実験データすら信じていないし、分析をでっち上げて、下した結論もあいまいで、何を言いたいのかはよくわからない。」
さらに、このユーザーは宇宙開発部門に勤務する人の中に、共産党高官の子弟が多いと批判した。この子弟らは親の影響力でほとんど昇進するが、しかしこのような背景を持たない一般家庭出身で才能のある優秀な研究員は昇進の機会は全くないと暴いた。この環境の下で、辞職しようと考えている研究員が多いが、しかし辞職後の戸籍問題や住宅問題などがあって、なかなか辞職に踏み切れないという。
この現象に対して、他のネットユーザーは「宇宙開発部門だけではなく、他の科学研究関連国有企業も同じだ。投稿のように、中国では(機械の)最重要な部品の開発・製造すらできない。全部アメリカから買ってくるのだ。これらの企業では、科学技術研究を全く行っていない」との意見を示した。
いっぽう、現在中国社会全体が目先の金・利益・権力を深く追求することが、根本的な原因だと指摘するユーザーがいる。
「若い人だけが悪いではない。今の社会雰囲気の下で、職場で真面目に、着実に研究をやらせてもらえない。真面目に研究をやっても短期的に収益がでないので、上司はあなたの給料をカットするしかないのだ。」
「会社内の人が、一夜にして財を成した富豪に対して羨ましがっていて、(自分も早く金持ちになりたいと思っているから)落ち着いて仕事できない状態だ…人々は目先の利益と成功を得ようと焦っているという社会環境に問題がある。皆、心を落ち着かせて、着実に仕事を行うことができないし、確実に事業を行う企業もますます少なくなくなってきた。」
「われわれは権力を得たこと、あるいは金儲けができたことを、成功したと理解しているのだから。」とのコメントが集まった。
(翻訳編集・張哲)