会社更生手続中の中国国営鉄鋼大手・重慶鋼鉄12日の発表によると、現在確定された同社の債務規模が356億3900万元(約6059億円)に上ったという。7月、同社の債権者は債務の不履行があったとして、重慶市第1中級人民法院に同社の会社更生を申請し、受理された。一方、黄奇帆・重慶市前市長と息子の黄毅氏が同社の国有資産を流出させ、同社を経営破綻に追い込んだとの情報がある。
中国紙・経済観察報(15日付)によると、債務返済の資金に充てるため、同社の錬鉄部門、錬鋼部門および一部の不動産は16日から、地裁の差し押さえ資産競売サイトで公売にかけられる。見積り総額は約100億元(約1700億円)だという。
重慶鋼鉄が2016年3月31日に発表した年度財務報告によると、純利益は約47億元(約799億円)の赤字で、資産負債率が100.29%に達し、「債務返済の資金が不足している」とした。
同社は経営再建に向けて資産売却や第三者割当増資を計画していたが、今年5月3日に再建計画の中止を明らかにした。さらに、7月3日に会社更生手続きを開始したと発表。
同社は17年度の収益が依然として大幅な赤字となれば、今後中国国内人民元建て株式市場(A株)から上場廃止を余儀なくされるとみられる。
海外一部のメディアは以前、世界投資銀行大手モルガン・スタンレー中国部門の副社長を務めた黄毅(Nick Huang)氏が近年の重慶鋼鉄に巨額な赤字をもたらした張本人だと報道した。
黄毅氏は重慶市前市長の黄奇帆氏の息子。モルガンスタンレー中国部門が2009年、香港鉄鋼企業・亜洲鋼鉄控股有限公司への買収案で重慶鋼鉄に協力したという。
黄毅氏が自身の人脈や父の地位を利用して、オーストラリアから大量の鉄鉱石を輸入し、高価で重慶鋼鉄に転売し莫大な利益を手にしたが、同社には大きな損失を与えたとされる。
重慶市の政治経済情勢に詳しいジャーナリストの姜維平氏は、黄奇帆氏一族が重慶鋼鉄を通じて、不正に蓄財した資産規模は数10億元(数100億円)だと指摘した。昨年中国の反腐敗当局が重慶市を視察した後、重慶鋼鉄の複数の高級幹部は失脚した。中には、同社の董栄華・元副社長が昨年11月に当局の取り調べを受けていた。
黄奇帆氏は1983年から上海市経済委員会綜合規劃室副主任、市経済諮訊センタ主任などのポストを歴任し、上海市政界で約18年間、人脈を広げてきた。中国共産党内の江沢民派閥「上海幇」の一人だとみられる。
01年10月に、黄氏は重慶市副市長に就任。07年11月に重慶市党委員会書記に任命された薄熙来について、黄氏は「非常に良い協力関係を築いている」と公の場で数回発言したことがある。
(翻訳編集・張哲)