米大手映画会社のパラマウント・ピクチャーズはこのほど、中国企業2社から10億ドルの出資を受ける合意が白紙撤回になったと発表した。近年、中国企業の海外映画業界への参入が活発化するが、プロパガンダの目的を懸念する声も強まっている。
同社は昨年11月、中国国営大手映画会社の上海電影集団(上影)、華樺伝媒(Huaha Media)から合計10億ドルの出資を受けるという契約を取り付けた。今後3年間、パラマウントが製作する全ての映画に、同2社が制作費の25%以上を負担するという内容だ。
今年6月に支払う予定の初回分担金は8月になっても、パラマウント側に入らなかった。中国政府によるマネーの海外流出規制が一因と思われるが、ほかにも複雑な事情があるようだ。中国とのパートナーシップを推進してきたグレイCEOの退任を、中国側が快く受け止めていないという見方もある。
パラマウントは7日の声明文で、双方が契約の白紙撤回に同意したことを明らかにした。
同社はゴッドファーザー、タイタニック、フォレスト・ガンプ(一期一会)など映画史上に名を残す作品を生み出し、ハリウッドで不動の地位を持っている。しかし、近年広告収入の激減や、複数の映画新作の不振により経営難に陥っている。
昨年、同社は中国の大手複合企業「万達グループ」に49%の株の売却を決定したが、親会社バイアコムの取締役会の反対によりあえなく断念した。
万逹グループは2012年から、北米で業界2位の映画館チェーンAMCシアターズや、米中堅映画会社のレジェンダリー・ピクチャーズを買収するなど、海外映画業界への進出に強い意欲を見せている。
「ハリウッドの大手映画会社各社を気に入っている」と豪語した万逹グループの王健林会長だが、パラマウント買収が挫折したあと、中国官製メディアに対し「我々はまだ彼らの厚い信頼を得ていない」と悔やんだ。
日本では昨年、ソニー・ピクチャーズが万逹グループとパートナーシップ契約を交わした。一部の情報によると、ソニーが製作配給する映画の一部に出資する代わりに、映画制作に介入することが条件だ。
(翻訳編集・叶清)