中国の人権弁護士夫妻の長男(18)が13日、観光ビザで東京に向かう際、天津国際空港で「出国すれば、国家安全に危害を及ぼす可能性がある」との理由で足止めされた。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。
出国審査カウンターで提示したパスポートにはさみを入れられ、出国ができなくなったのは、2015年7月の人権弁護士一斉拘束の「709事件」で1年間勾留され、いまは保釈中の王宇・包龍軍両氏の長男。
VOAの記者が中国公安当局に事情を問い合わせしようとしたが、電話がつながらなかったという。VOAの取材に応じた両氏が長男の遭遇を詳述した。
それによると、2年前、当時16歳の長男は両親の逮捕とともに身柄を拘束されて、拘置所で暴行を受けた。その際、パスポートが取り上げられ予定していたオーストラリア留学を断念せざるを得なかった。釈放された長男は北京市から親族のいる内モンゴルに転居させられ、公安当局は教室に監視カメラを取り付けるなど常に長男を監視していた。同年10月、支援者の助けでミャンマーに出国したものの、中国公安当局に追跡されて連れ戻された。
VOAは、中国では人権弁護士や人権活動家など当局の弾圧対象、その家族は「出国後、国家の安全を脅かす」との理由で出国を禁止されるケースが多いとして、長男同様の事例はほかにも多数あると報じた。
王宇氏(46)は中国法曹界で「もっとも勇敢な女性人権弁護士」と称されている。2013年から、中国政府が集団弾圧している気功団体・法輪功の愛好者や、著名なウイグル人学者のイルハム・トフティ氏の弁護を引き受けるなど、社会弱者層の人権保護に取り組んできた。逮捕された翌2016年、欧州弁護士および法律協会の「欧州弁護士人権賞」を受賞した。
709事件で人権弁護士、法律事務所関係者、活動家などおよそ250人が逮捕・勾留され、または取り調べを受けた。今年10月時点で8人が国家政権転覆罪や騒動挑発罪で有罪判決が確定し、最長7年6カ月の懲役刑に服している。
(翻訳編集・叶清)