「旧正月」と「春節」、どちらが正しい?

2018/02/23 更新: 2018/02/23

2月の旧正月期間中、訪日する中国人観光客の増加で、「旧正月」「春節」などの言葉に触れる機会が多くなる。この二つの言葉にどのような違いがあるのか。中国国内でその違いをめぐって論争が起きている。

世界のファッション界で活躍する中国湖南省出身のスーパーモデル、劉雯氏(30)は旧暦新年を祝うため、交流サイト(SNS)インスタグラムを通じて、各国のファンに対して英語で「Happy Lunar New Year」(旧正月おめでとうございます)を投稿した。これに対して、中国国内インターネット上で賛否を巻き起こした。

「Lunar」とは中国伝統の歴である太陰太陽暦を指し、または黄暦・皇暦、旧暦とも呼ばれている。「Lunar New Year」を中国語に訳すると「黄暦新年」になり、旧正月を指す。ベトナムや韓国などアジア多くの国では、過去中国伝統の暦が使われていたため、「Lunar New Year」はベトナム人や韓国人にもなじみがある。

一方、一部のネットユーザーは、劉雯氏が2年前に英語で「Happy Chinese New Year」を使っていたのに対して、「なぜ今年『Lunar New Year』を使ったのか」「ベトナム人と韓国人の歓心を買うためなのか」「中国人であることを忘れたのか」と集中砲火を浴びせた。

劉氏を支持する意見のユーザーは、「Chinese New Year」を中国語に訳せば「農暦新年」「春節」となるから、「Lunar New Year」と同じく旧正月を意味すると反対意見を一蹴した。

批判を受けた劉雯氏はその後、投稿内容を「Happy Chinese New Year」に変更した。

中国メディアは、米政府が移民に向けての旧正月挨拶で、これまでの「Happy Chinese New Year」から「Happy Lunar New Year」に変えたことが、今回の騒動につながったと指摘した。近年、米国などの英語圏に移住する韓国人やベトナム人が増えている。

劉雯氏は2017年、米フォーブス誌の「世界で最も稼ぐモデル」ランキングで、年収650万ドルで8位にランクインした。同氏のSNS「新浪微博」のアカウントには約2000万人以上、インスタグラムでは370万人のフォロワーがいる。

「農暦新年」・「春節」の呼び方の始まり

 

中国では今、旧正月の呼び名として「農暦新年」「陰暦新年」「春節」などがよく使われている。しかし、これらの呼び方は中国伝統文化に基づいたものではない。

1912年に中華民国の設立とともに、中国の暦は太陰太陽暦から現在のグレゴリオ暦(太陽暦)に変わった。その当時、旧暦である太陰太陽暦を言及する場合「黄暦」と呼んでいた。

中国では、古代の「三皇五帝」の一人である黄帝が歴史上、初の暦法である太陰太陽暦を公布したため、「黄暦」または「皇暦」と呼ぶようになったとの言い伝えがある。

黄帝は中国固有の宗教、道教の創始者でもあるとされている。このため、太陰太陽暦は道教の「陰陽説」を完全に表現したもので、月と太陽の動きを同時に取り入れた暦だ。この暦法には単純な「陰暦」でもなければ「陽暦」でもない。

無神論を掲げる共産党が1949年に政権を奪取した後、中国伝統文化を大規模に破壊してきた。旧暦の呼び方に関して、「黄暦」と「皇暦」を廃止し、「陰暦」にした。しかし、中国当局は「陰暦」でも、道教の陰陽説や中国伝統文化に根強くある神仏の信仰が色濃く反映されているとし、1968年に旧暦の呼び方を「農暦」に再変更した。その狙いは、中国人に旧暦は農業のための暦法であったと印象付け、無神論に導くためだった。

さらに、中国当局はその後旧正月を「春節」と呼ぶようになった。この文字通りに、今中国や海外華僑の間では旧正月は、天地神明や先祖を敬うという一年間で最も重要な祭日ではなく、春の到来を祝う普通の日になってしまった。

中国伝統文化の復興を願う大紀元メディアグループは、旧正月を「農暦新年」「春節」と表現しない。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: