習近平国家主席は5月28日、政府系最高研究機関である中国科学院と中国工程院の院士大会において、技術の自立の必要性と核心技術の国産化について演説した。背景には、米政府が4月、中国通信大手の中興通訊(ZTE)に対して、米企業から半導体チップなどの部品供給を禁止されたことに関係する。同会議には、中国国内技術研究者1300人以上が出席した。
米政府の制裁を受けて、スマートフォン製造大手のZTEが、生産停止と経営難に追い込まれた。中国政府系シンクタンク、賽迪智庫が2016年に発表した調査では、ZTEはチップの53%を米企業から購入していた。中国製造業が技術力の面で、海外企業に強く依存している現状を浮き彫りにした。こうした現状に中国当局は強い危機感を抱いているとみられる。
習主席は当日の演説において、国内技術環境について「状況が緊迫している」と話した。また、核心技術の自立を早急に実現できるよう「最重要の分野で優秀な人材を集めよう」と指示した。
米政府が4月、ZTEへの制裁を発表してから、習主席は、中央政治局での会議や北京大学への視察など公の場で6回も技術の国産化について言及した。
一方、中国共産党機関紙・人民日報は4月17日、当局は技術の自立を目指し、半導体生産業への投資を拡大していくと報じた。
ロイター通信4月27日の報道によると、14年6月に設立した半導体産業を特化した政府系ファンド、中国国家集成電路産業投資基金はこのほど、1200億元(約2兆411億円)規模の資金を調達した。
米紙・ウォールストリート・ジャーナル5月の報道でも、中国当局は今後半導体産業の振興に3000億元(約5兆1027億円)の資金を投入すると伝えられた。
しかし、資金力で技術の自立は難しい。
中国国内メディア「新財富」は、研究機関の資源分配体制に問題があるため、開発・研究の費用は多く無駄になったと指摘した。米メディアのボイス・オブ・アメリカも、中国の現行の政治体制では、技術者の創造力は抑制されるとの見解を示した。
中国当局は、国家戦略「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」を通じて、2049年までに、世界一の製造大国になることを目指している。
(翻訳編集・張哲)