オバマ政権は、米国の金融システムにアクセスすることを禁止していたイランに対して、公式な誓約もなく許可していたことが、米上院の小委員会の調査報告書で明らかになった。
6月6日に発表された米上院国土安全保障・行政委員会の常任小委員会の調査報告によると、オバマ政権によるこの許可は「禁止されるべきものだった」と報告した。
参考:米上院国土安全保障・行政委員会常任小委員会の調査報告「米財務省のライセンス付与 米国金融システムを通じてイラン資産を両替」
2016年2月24日、オバマ政権時の米財務省は、イランの資産口座があるオマーンのマスカット銀行に対して「米国の金融機関」を通じて、ユーロへ両替することを許可する、特別なライセンスを発行していた。
イランの核開発の大幅減退の後、欧米が制裁を解除すると約束した2015年の「イラン核合意」だが、すべての経済制裁を解除することを約束していない。つまり、イランの米国金融システムへのアクセスは、合意後も依然としてごく限定されたものだった。
報告によると、欧米諸国がイラン核合意に基づく制裁解除手続きをとりはじめた2016年1月当時、イランは、オマーンのマスカット銀行に57億ドル(約6200億円)相当の資産をオマーンリアル(オマーンの通貨・1オマーンリアル=285.81円・2018年6月11日時点)で保有していた。
オバマ政権が欧米6カ国と結んだイラン核合意を無視して、マスカット銀行に与えたライセンスにより、イランの資産はユーロから、さらに米ドルへの両替が可能になった。
しかも、オバマ政権当局者たちは、このライセンス発行後も、イランの米国金融システムへのアクセスを許可していないと議会で証言を続けていたことが、米議会の証言記録に残っている。
小委員会委員長ロブ・ポートマン上院議員(共和党)は「オバマ政権はアメリカ人と議会を欺いた」「政権は交渉成立に必死だったために、そうした(アクセス許可)と考える」と述べた。
AP通信の取材に答えた、オバマ政権時の財務省制裁担当シーン・キーン氏は、小委員会の報告に対して「ライセンスは、イランの海外資産の一時取引を許可するものだが、継続して米国金融システムへのアクセスを許すものではない」と述べた。
報告によると、米国の2つの銀行は、オバマ政権当局の要請にもかかわらず、イラン資産の両替支援を拒んだ。2銀行は評判を左右するとして社名の公開を拒んだ。ポートマン議員は国務省上級幹部の話として、イラン資産の口座を有するマスカット銀行は、最終的に在米の欧州系銀行で両替した可能性があるという。
米保守派シンクタンク「民主の民主防衛基金」のイラン専門家ジョナサン・シュナイツァー研究員は、「オバマ大統領によるイラン経済への後押しは、アメリカの利益に反しただけでなく、法律さえも覆した」とSNSで述べた。
トランプ政権は2018年5月、米国の合意離脱と経済制裁を再開と表明した。大統領は、イランの弾道ミサイル開発は制限できておらず、シリアやレバノンでイランの影響拡大を促していると主張。イラン核合意は有名無実となっていると指摘した。
(編集・佐渡道世)