中国政府系メディアが19日、約19日ぶりに習近平国家主席の動静を報じた。国営中央テレビ(CCTV)は当日夜7時のニュース番組で、習主席が17日から19日の日程で開催された党中央軍事委員会の会議に出席したと、11分間にわたって詳しく報道した。
国営新華社通信は同日、同会議における習主席のスピーチ全文を掲載した。習氏は「軍に対する党の絶対的指導を堅持する」と強調した。軍の汚職摘発に触れたのはスピーチの終盤で1回のみだった。近年、大々的に展開してきた反腐敗キャンペーンは勢いを失った印象を受けた。
一方、その前日、劉少奇・元国家主席の息子、元将校の劉源氏(上将)も国内メディアに対して軍での反腐敗運動について述べた。
劉源氏は、軍内の習近平派と知られている。習近平氏が推し進める反腐敗運動で、劉源氏は軍での汚職摘発に協力した。軍高官の谷俊山氏、郭伯雄氏、徐才厚氏の腐敗問題を告発したのは劉氏だと報じられていた。同氏は15年12月、軍の総後勤部政治委員から引退した。
中国紙・新京報が19日、微信公式アカウント「政事児」で劉氏へのインタビュー記事を掲載した。これによると、劉氏は12年11月の党大会前、総後勤部の谷俊山・副部長(中将階級)の汚職問題を当局に告発した後、谷の後ろ盾である徐才厚党中央軍事委員会副主席(当時)に「つぶすぞ」と脅迫されたと明かした。
また劉氏はインタビューで、長年軍部を牛耳った徐才厚氏による悪影響は「致命的だ」とし、「軍の反腐敗運動は長期戦になる」と主張した。劉源氏の発言は、習近平氏の演説にシンクロしたものだとみられる。
昨年11月の党大会で、当局が反腐敗運動で「圧倒的な勝利を勝ち取ろう」とのスローガンを掲げたが、今は失速しているようにみえる。習近平氏は2018年の新年祝辞で、就任後初めて反腐敗について言及しなかった。
一方、党幹部や公務員らの汚職を取り締まる党中央規律検査委員会の趙楽際・書記は就任後、メディアや公の場への露出は少ない。今年に入ってから、失脚した幹部の階級が低くなり、人数も限られている。当局は当初、反腐敗運動を始めた際、幹部の階級に「上限を設けない」と豪語した。なぜ、今その勢いが後退したのか。
理由は簡単だ。軍内の反腐敗を例にしよう。谷俊山氏の後ろ盾は徐才厚氏と郭伯雄氏で、徐氏と郭氏の後ろ盾は、党・軍に汚職・腐敗をまん延させた張本人、江沢民氏だ。習政権が、江沢民派の核心人物である周永康氏を失脚させた後、江沢民氏とその側近の曽慶紅前国家副主席の2人を一網打尽にしなければならなかったが、このようにしなかった。
江勢力を完全に排除しなければ、反腐敗の勝利は獲得できない。それどころか、江沢民派に反発の機会を与えてしまう。この政治情勢を安定させ、国民の不満を払しょくする絶好のチャンスを、習近平氏は逃した。そのうえ、昨年党大会以降、習政権の政策が左寄りに転換した。
習近平当局は今、内憂外患の状況に陥っている。国外では、トランプ米政権が対中強硬姿勢に転換し、国際社会も世界覇権を狙う中国共産党政権に対抗する動きを加速化させている。国内では、江沢民派をはじめとする利益集団が習近平氏の失脚を狙っているほか、共産党の暴政に対して退役軍人や強制立ち退きの被害者、ネット金融破綻の被害者などが各地で、次々と大規模な抗議デモを行っている。
この現状は共産党政権を崩壊に追い込む可能性さえある。反腐敗は今では無意味な運動となり、失速するのも自然の流れである。この局面を打破するためには、直ちに江沢民氏を逮捕するしかない。でなければ、過去数年間の汚職摘発キャンペーンは、国民に無益な党内の権力闘争に過ぎない。
(大紀元コメンテーター・夏小強、翻訳編集・張哲)