欧米各国が中国当局による技術窃盗への警戒感を強めるなか、半導体露光装置世界最大手、オランダのASMLが、中国出身者の採用をしないことが取り沙汰された。同社は声明で否定した。しかし、独自の技術開発に関して、米政府からの許可がなければ、中国出身技術者の関わりは「むずかしい」と示した。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が24日伝えた。
オランダの大学院に留学中の中国人学生は22日、中国版Twitter(微博)に、同国で就職活動を行った際、ASMLに拒否されたと書き込んだ。この投稿によると、ASMLがこの学生に送った通知書で、「米政府の圧力で、中国出身者を雇用しないことを決めた」との旨を伝えた。この投稿に国内外から関心が寄せられた。
ASMLは24日、RFAの取材に対して、人材採用に関して「国籍の制限はない」「現在も将来も、条件に適応する中国籍学生などを雇用する」との声明を公表した。
同声明によると、同社には中国籍を含む20カ国の出身の社員が在籍している。外国籍の従業員が、米国の「独創的な技術」に携わる場合、米政府からの許可証明書を取得する必要があるという。
ASMLはオランダ・フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーで、世界16カ国に拠点を構える世界的大手。同社が生産する半導体露光装置は市場の8割を占める。しかし、半導体露光装置を製造するのに必要なレーザー発振機やマスク・パッケージなどの重要部品は、米企業から供給されている。
トランプ米政権は、中国当局による米企業の知的財産権侵害やハイテク技術の盗用、強制的技術移転を問題視している。米中通商問題において、中国のハイテク製品を中心に貿易制裁を課した。
中国国内では、ASMLが中国人の従業員を採用しない動きには、米政府と関係があるとの推測が広がっている。
米政府は4月、中国通信大手の中興通訊(ZTE)がイランなどに通信機器を不正に輸入したとして、米企業によるZTEとの取引禁止に踏み切った。これ以降、中国当局は米企業への半導体部品の依存を脱却するために、欧州企業などからの技術獲得に注力している。RFAは、ASMLの声明内容では、中国当局の狙いが「失敗に終わる」との見方を示した。
中国当局が2001年世界貿易機関(WTO)に加盟してから、外国企業のハイテク技術の窃盗、強制的技術移転を強化した。なかには、外国企業の社員に賄賂を与え、引き替えに機密技術情報を提供してもらうケースが多い。その対象となる企業の社員の大半は中国出身者、または華僑だ。
米連邦捜査局(FBI)は8月1日、ゼネラル・エレクトリック社の重要技術情報を盗み、中国企業に渡したとして、同社の鄭小清(Xiaoqing Zheng)中国国籍技術者を逮捕した。RFAによると、鄭氏は、中国当局が主導する海外ハイレベル人材招致計画、「千人計画」に選ばれた一人だ。
(翻訳編集・張哲)