中国北京で8月31日、第7回日中財務対話が開催され、中国は日本に対して通貨交換など金融協力に前向きな姿勢を示した。日本接近の背景には、米中貿易戦で米に対抗する力を得るためだとの見方がある。
対話には麻生太郎・副総理兼財務大臣、中国の劉昆・財政部長(財務相)、両国の中央銀行や金融監督当局幹部などが出席した。
財務省の発表によると、最大の焦点となる日中通貨スワップ協定の再開について、両国の財務相は今年5月の日中首脳会談で「合意事項にかかわる作業を速やかに進める」ことで一致した。両国が今後、協議を一段と進めることを示唆した。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)2日によると、麻生氏は日中財務対話について「今までで一番雰囲気が良かった。それが最大の成果だ」と記者団に述べたという。中国当局が通貨スワップの協議再開や他の金融協力に前向きなのは、米中貿易戦の激化で、米に対抗する力を得るために日本への接近を図っているとVOAは報じている。
通貨危機や有事に備える日本円と人民元を交換する通貨スワップ協定は2002年に締結された。しかしその後、尖閣諸島問題で両国関係が冷え込み、通貨スワップは13年9月に期限を迎えた後更新されなかった。
ロイターの報道によると、今回の日中財務対話で、双方は従来30億ドル(約3300億円)程度だったスワップの交換上限を10倍の3兆円に拡大することで大枠合意した。
また麻生副総理は、中国共産党中央政治局常務委員兼副首相の韓正氏、米中通商協議を担当する劉鶴・副首相とそれぞれ会談した。
麻生副総理は中国高官らとの会談で、日中関係改善の動きを評価した。両国高官は今後、安倍晋三首相の訪中および習近平国家主席の訪日で意見を交わすとみられる。
いっぽう、自民党の二階俊博・幹事長は31日に北京で、王岐山・国家副主席と会談した。
VOAの報道によると、王副主席は「日中友好は両国国民の根本利益と時代の流れに合致している」「日中平和条約締結40周年を迎え、両国の首脳は4つの政治文献で合意した重要共通認識に基づき、相互訪問を増やし、互いの政治的信用を促進し、双方のウィンウィンの関係を拡大するなど、両国関係を正常な軌道に戻して、新たに発展させていく必要がある」とした。
二階幹事長は、王副主席に対して訪日を要請した。
対米外交を担当する王岐山氏は8月24日、日中友好協会会長で自民党税制調査会最高顧問を務める野田毅氏一行と会見した。会談中、王氏は日中関係改善を前向きに評価した。また、米中貿易戦について、王副主席は野田氏に対して「米中間に貿易摩擦はあるが、貿易戦ではない」と強調した。
安倍首相は9月1日産経新聞のインタビューで、日中関係が「完全に正常な軌道に戻った」と述べた。
東北大学大学院の阿南友亮・教授はVOAに対して、中国による日本への接近に強い警戒感を示した。阿南氏によると、中国の外交、経済、金融など各分野が政治と結び付いているため、日本企業が中国経済に依存すればするほど、外交上日本の立場がますます弱くなると指摘した。
(翻訳編集・張哲)