ロシア政府は、長年の友好国であるベトナムに、10億米ドル以上の最新兵器を輸出する予定であることを明かした。両国はむこう3年間軍事合同演習を実施する計画がある。ロシアからの武器供給は、中国と関係国によるつばぜり合いが続く南シナ海にまで影響が拡大すると考えられている。
ロシア国営タス通信によると、セルゲイ・ショイグ国防相は、ロシアとベトナムが今春に結んだ軍事技術協力協定に基づいて、10億米ドル以上の武器を受注したと述べた。
この報道は、ベトナム首脳グエン・フー・チョン中央委員会書記長の9月6日から8日までの訪ロ期間中に報じられた。政権与党ベトナム共産党は、プーチン大統領の会談後の7日に発表した声明の中で「両国は軍事関係の発展を継続するというコミットメントを改めて確認した」と記した。
10億ドル取引の詳細は明らかになっていないが、以前ロシアは、戦闘機スホイ(Su-30MK2)と潜水艦P636をベトナムに提供した。2017年の計画では、ベトナムに戦車T-90とT-90sが提供されることになっている。
ロシアはベトナムの最大の武器輸入相手国で、ベトナムに新型ミサイル艇、潜水艦、フリゲート艦、戦闘機、対艦ミサイル、戦車など、陸海軍に必要な装備と兵器を輸出している。
タス通信によると、ロシアとベトナムは4月、第7回国際安全保障モスクワ会議に合わせて、両国の国防相が2020年までの軍事協力を定めた。これによりロシアは、ベトナムの南シナ海における捜索・救助活動に加わる形で、救助艇の派遣が可能になる。さらに、向こう3年間は軍事合同演習を行う計画がある。
2017年4月には、ロシア軍艦3隻がベトナム南部のカムラン港に寄港した。専門家は、軍事協力が強化されれば、ロシア軍艦の派遣は増えると予想している。
米ラジオフリーアジア(RFA)が報じた、ロシア戦略研究所マリア・モレンコバ氏の話によると、ロシアとベトナムには「実際的な戦略的パートナーシップが確立している」と述べ、兵器供給だけでなく、対艦ミサイルなどの共同開発研究を行っている。
さらに、両国は南シナ海の石油・ガス田探査、天然ガスで動く自動車の開発、原子力発電所、銀行の金融システムなど、幅広い面で協力を行っているという。
マリア・モレンコバ氏は、両国の戦略的パートナーシップは着実に深められているとコメントした
RFAは、ロシアによるベトナムへの武器供給が中国をけん制する狙いがあると分析した。
さらに、5月14日、ロシアの石油会社が、南シナ海における中国とベトナムとの紛争地域で油田開発を行うことを発表した。同月17日、中国外務省報道官は定例記者会見で、中国の主権と管轄権利を尊重するようにと、ロシア側の動きを批判したが、口調はいつもよりも控えめだった。その後、ロシア政府との「友好」を重視する姿勢に切り替えている。
9月中旬、習近平・中国国家主席は、ロシア極東ウラジオストクで開催される「第4回東方経済フォーラム」に参加するため訪ロする。また11日から17日まで、ロシアと中国が参加する大規模な軍事合同演習「ボストーク(東方)2018」を実施する。
複雑化するインド太平洋地域の状況
インド太平洋地域の情勢は複雑化している。中国海軍はこのたび、オーストラリア海軍主催の大規模な多国間共同訓練「カカドゥ」に初めて参加した。
北部ダーウィン港周辺海域を中心とした訓練では、日本の海上自衛隊を含む米海軍、カナダ海軍、インド海軍、ベトナム海軍を含むインド太平洋地域国家27カ国から23の艦船、3000人超が参加する。演習は8月31から9月14日まで。
オーストラリア海軍広報によると、同軍艦船に中国人民解放軍の兵士を乗船させ、演習について相互交流したという。
オーストラリア艦のフリゲート艦HMASニューキャッスル副船長は、軍人演習の目的は、各国軍との相互信頼と理解を得て、公海における衝突を避けるためだと述べた。また、救助活動の共同訓練も行うという。
中国軍の参加を許可したオーストラリア海軍の動きは、近年、同国で可決された「外国からの影響力の透明化」法案に基づくとの見方もある。
(編集・佐渡道世)