国営英字紙チャイナデーリー19日付によると、四川省成都市では、本物の月に似せた照明用の衛星「人工の月」を2020年までに打ち上げる計画がある。生態環境への影響が懸念されている。
この計画は今月、成都市で行われた展覧会で成都航太科工微電子系統研究院有限公司の武春風会長から発表された。
「人工の月」計画は中央当局に支援されている。チャイナデイリーによると、国有企業で中国の主要な宇宙計画を請け負う中国航空宇宙科学工業がプロジェクトパートナーになっている。
成都航太科工微電子系統研究院は、中国政府は軍が民間企業の技術を吸収する「軍民融合」計画の一つとして設立された組織。武春風会長は共産党書記を務める。
計画担当者によると、「人工の月」は太陽光を反射し、街灯の代わりに都市部を10~80平方キロの範囲を調整して照らす。第一号機が成功すれば、2022年までに3機を追加投入する予定だという。
報道によれば、実際の月よりも8倍明るく光り、成都市の電気代を年間12億元(約200億円)節約できる見通し。
しかし、光害による懸念も指摘されている。米フォーブスの取材に応じた米国の非営利団体・国際暗夜協会の代表ジョン・バレンティン氏は、月の8倍に相当する人工照明は、過密都市の光の強度に似た程度の明るさだと計算する。
「人工の月は約47倍、地上照明のレベルを増加させる」「成都の人工の月は、暗い夜への妨げを大幅に増大させ、不必要な光を遮ることができない住民と野生生物に問題を引き起こすだろう」とバレンティン氏は述べた。
人工の光は、天然の月の明かりをたよりに産卵のために海辺に上がるウミガメや、月光を頼りに移動する渡り鳥など、多くの動物たちの自然環境を侵害する危険がある。国際暗夜協会によると、人工の光に引き寄せられた昆虫が焼死する恐れもある。
(編集・佐渡道世)