ホワイトハウス報告書、社会主義の危害を警告「歴史のゴミ箱に捨てよう」

2018/10/27 更新: 2018/10/27

「カール・マルクス生誕200周年の今、社会主義はアメリカの政治論議で盛り返している」ホワイトハウスが10月23日に発表した研究報告書の冒頭でこのように述べられている。大統領経済諮問委員会(CEA)が作成した同報告書は初めて、経済学の視点から社会主義の危害を分析し、「社会主義を実践する政府は全国民のお金を使い果たしてしまう」と警鐘を鳴らした。

『社会主義の機会費用(The Opportunity Costs of Socialism)』と題する同報告書は、社会主義経済の特徴、マクロ経済への影響、および米国の最近の政策提言との関係について論じている。

機会費用とは、ある行動を選択することによって失われる、他の選択可能な行動のうちの最大利益を指す経済学上の概念。

CEAは報告書をまとめるにあたって、毛沢東時代の中国、キューバ、旧ソ連などの農業中心の旧型社会主義国家のみならず、ベネズエラや北欧などの社会主義体制を敷く現代工業国も調査した。

社会主義者は従来から、「資本主義国家の収入分配は搾取による結果」ととらえ、国家統制によって是正されるべきだと主張している。その解決策として、単一支払者制度(Single Payer System)と高税率(各自の能力に応じる)、国家の財と公共サービスの大半を自由に(自分のニーズに応じる)分配する政策を提案してきた。

同報告書は、社会主義体制の国は生産活動の目標達成のために刺激策を与えることがなく、ただ商品とサービスを「無償化」しているだけで、価格にコストや消費者のニーズなど重要情報を反映させていないとした。

報告書はマーガレット・サッチャー元英首相1976年の発言を引用し、「社会主義国家はいつも国民のお金を使い果たしている」とその危害について警鐘を鳴らした。また、国を繁栄させたければ「国民に多くの選択肢を与え、国民が自分で収入の使い道を決められるようにすべきだ」と力説した。

実現されない公約

CEAの調査によると、社会主義制度の国では「生産量が減少し続ける」。これは以前の農業国でも現在の工業国でも変わっていない。

毛沢東時代の中国、キューバ、旧ソ連などの典型的な社会主義の農業国では、政府が農業生産をコントロールし、「食糧の豊作を約束した」。しかし、結果的に食糧の大幅な減産によって多くの国民が餓死した。

現在の民主主義国家が社会主義政策を実行しても、同様な結果がもたらされる。CEAは、その好例がベネズエラだと指摘。原油の確認埋蔵量で世界一を誇るベネズエラの経済が、長年の社会主義体制のつけで今、崩壊寸前の危機にある。

経済の自由度と所得の増加

同報告書によると、税収、公共事業支出、国有企業の規模、経済規制などが国内総生産(GDP)に与える影響を研究した結果、経済的な自由度が高ければ高いほど、景気が良くなると分かった。

「もし、米国がベネズエラのような高度社会主義政策を実施すれば、長期的に米国のGDPは少なくとも4割低下する。米国国民の所得が一人あたり毎年、2万4000ドル(約269万円)減少するという計算だ」

北欧諸国が現在、労働市場を規制し、課税している。米国が北欧諸国の政策を採用すれば、平均賃金を得ている米国の家庭は毎年、2000~5000ドル(約22万4000円~56万円)の譲渡控除後の課税を受けることになる、と報告書は算出した。北欧諸国は米国と比べて、生活水準が少なくとも15%低いとされている。

さらに、米国は北欧諸国の70年代の政策を実行した場合、長期的にGDPは19%縮小し、米国国民一人当たりの所得は毎年、1万1000ドル(約123万2000円)減少するという。

メディケア・フォー・オールと課税

CEAは、社会主義の色合いを強く帯びる「メディケア・フォー・オール(国民皆保険制度)」の機会費用を試算した。米国では一部の議員が、国民全員をカバーする公的医療保険の立法を望んでいる。「メディケア・フォー・オール」は、米政府あるいは公的機関が保険料を徴収し、国民全員の医療費を支払うという制度だ。

CEAの試算では、同制度を導入すれば政府支出は米経済の約17%以上膨らむ。

また、同制度の財源は、金融機関からの借入や増税政策に頼らないで連邦政府の支出だけで賄われる場合、連邦政府の予算の半分以上を削減しなければならないと推算した。また、この制度の財源を確保するために増税すれば、国民の生産性が低下し、2022年米のGDP規模は9%低下するとの見通しだ。国民一人あたりでは7000ドル(約78万4000円)減る。

米国では、公的医療保険の強制的加入が個人の選択の自由を奪ったと反対する市民が少なくない。

トランプ大統領は10月10日、米メディア・USAトゥデーに、「メディケア・フォー・オール」について寄稿した。大統領は、中間選挙で民主党が勝利した場合、米国が「次のベネズエラになる」と警告した。

11月6日に行われる中間選挙の前に公表された報告書は、米民主党政権が提唱した社会主義政策を念頭にあるものとされる。

ホワイトハウスは24日、ツイッターで「政治の話はさておき、社会主義は歴史のゴミ箱に捨てるべきだ」と投稿した。

(翻訳編集・張哲)

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