米中間選挙終了後、中国指導部は、米国との協議再開に意欲を示した。海外メディアや専門家は、両国はある程度の合意に達する見込みだが、中国が「市場の完全開放」「強制技術移転の中止」「国有企業への補助金」などの米の要求を全部飲み込む用意がないため、貿易に端を発した対立が続くとの見方を示した。
米に歩み寄る姿勢を見せた中国
中国の劉鶴副首相は9日、貿易摩擦の緩和に向けてムニューシン米財務長官と電話会談した。具体的な進展はなかったと報じられた。
中国メディア「財新網」傘下の「財新週刊」は12日に社説を発表した。社説は、米中貿易戦についてできるだけ早く「段階的な成果」を収め、「そろそろ、米中にとって受け入れられる解決案はあっても良い」、「具体的な対立の解消に一段と努めるべきだ」と主張した。
また、同記事は11月末に予定されている習近平国家主席とトランプ米大統領の会談について、「得難い機会」で、両国政府が溝を埋める「誠意と決心」を示したと分析。両首脳は11月末にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて会談する。
財新網は、中国の王岐山国家副主席と近い関係にあるとみられる。12日の社説は、中国指導部が米に対する歩み寄りを示唆したとして、注目されている。
「双方にとって受け入れられる解決案に向けて作業を進める用意がある」
11月1日、習近平国家主席がトランプ大統領と電話会談を行った際、こう伝えた。また、王岐山国家副主席が6日、シンガポールで開催された「ニューエコノミー・フォーラム」で、同じ言葉を繰り返した。
中国政府系メディア「環球時報」も10日に社説を発表した。同社説は、9日米ワシントンで開催された米中外交・安全保障対話で、ポンペオ米国務長官が、中国の楊潔篪政治局員との会談に言及した。「米国と対抗しないことを中国側が強調した。中国は改革を続けていく。これはわれわれ(中国側)の真の望みである」などと表明した。
「環球時報」はこれまで「最後まで米国と戦う」と強硬論を唱えてきた。
米ラジオ・フリー・アジア(12日付)によると、中国清華大学政治学部元講師の呉強氏は、米中間選挙の結果を分析した中国当局は、トランプ政権と米議会が今後も対中強硬姿勢を続けると推測したため、対米戦略の見直しを迫られたと指摘した。
呉氏は、11月末の米中首脳会談において、中国側が形式上、ある程度の合意に達したい狙いがあるとした。「米中貿易摩擦を完全に解決するのに、依然として大きな障害があるため、双方の交渉は長く続くだろう」
トランプ政権が要求する「市場の完全開放」「強制技術移転の中止」「国有企業への補助金」を受け入れれば、共産党の政権運営に影響を与えかねないとして、中国の譲歩が難しいとみられる。
約束も信用されなくなった中国共産党政権
トランプ大統領は、習近平国家主席との電話会談を行った翌日の今月2日、中国側が貿易協議に関して「とても取引したがっている」、また「誰にとっても、米国にとっても、非常に公平な合意になるだろう」と語った。
ブルームバーグは2日、中国側との貿易合意成立に向けて、トランプ大統領が閣僚らに草案作成を指示したと報じた。しかし、クドロー国家経済会議(NEC)委員長は2日、米CNBCに対して、ブルームバーグの報道について「そうした動きがない」と否定し、米中貿易摩擦の解決について「大きな進展がない」「中国側はわれわれの(貿易に関する)質問に具体的に返答しなければならない」と述べた。
いっぽう、対中超強硬派と知られるナバロ国家通商会議(NTC)委員長は9日、ワシントンでの講演で、中国当局の信用のなさから、「米中双方が貿易問題で合意を成立したとしても、中国側が着実に実行すると限らない」と述べた。同氏は、中国当局は今まで、米国との間で締結した合意を順守したことがなかったと批判した。
習近平国家主席は5日、「第1回中国国際輸入博覧会」の開幕式でも輸入を拡大し、外資系企業の権利保護など市場環境も改善させると約束。「一連の改革を通じ、今後15年間のモノとサービスの輸入額は計40兆ドル(約4500兆円)を超える見通しだ」と表明した。
これについて、在中欧州商工会議所は6日の声明で、「中国政府の(対外開放)政策のほとんどは実現されていない」としている。さらに、(中国の対外開放政策に対する姿勢について)具体性を伴う方策や日程が示されていないと指摘。「中国における欧州企業コミュニティーは(中国政府の)この種の約束事に、もはや無関心になっている」と一蹴した。
一方、中国メディアによると、6日に中国指導部高官らは、上海市浦東新区陸家嘴にある上海中心大厦(上海タワー)を訪れ、陸家嘴金融シティーを視察し、「党組織建設工作」に関する報告を受けた。
大紀元コメンテーターの李林一氏は、中国当局が経済金融分野において、今も外資企業や国内民間企業で「党の指導を強化する」と強調していると指摘した。「市場開放を約束しても誰も信じないだろう」
(翻訳編集・張哲)