伝えられるところによると、米情報技術(IT)大手グーグルは、物議をかもしている中国向けの検閲機能付き検索エンジン「トンボ(Dragonfly)」の開発を実質停止したという。
ネットメディア・インターセプトは今年8月、内部告発者の話として、グーグルは2010年に撤退した中国市場の再参入のために、中国当局承認の検閲システム付き検索エンジン「トンボ」を開発しているとスクープした。このプロジェクトには米政府、議会も懸念を示しており、ペンス副大統領は10月の対中政策演説で、トンボ開発の即刻中止を提言した。
米下院司法委員会の公聴会では12月11日、グーグル最高責任者(CEO)サンダー・ピチャイ氏を招いた。CEOは、中国検索サービスを立ち上げる予定はないものの、今後の開発と参入の可能性を否定しなかった。
インターセプト12月18日付はプロジェクト開発を知るグーグル社員の話として、批判の的となったトンボの開発について、社内でも反発が強くなり、グーグル幹部は中央収集システムを停止したという。
社員によると、「検閲機能付き検索エンジンのブラックリストを作成」するため、北京拠点の中国語ポータルサイト、谷歌265.comを使用して情報収集していた。グーグルは2008年、265.comを中国の富豪から買収した。中国国内メディアによるニュースや天気、金融・株式、占い、ドラマ情報、ホテルや航空券、旅行などの情報を掲載している。谷歌はGoogleの中国語表記。
トンボ開発チームは、中国ネットユーザが265.comを利用した際の検索用語を収集していた。ユーザは検索結果にアクセスすると、中国最大手検索エンジン・百度の結果が表示される。このため、265.com自体は単なる情報収集の経路として利用されていた。
報道によれば、現在グーグルは中国から検索用語を収集していないという。「複数の技術者はトンボから完全撤退し、中国の代わりにインドやインドネシア、ロシア、中東、ブラジルの開発プロジェクトに関心を寄せるよう促された」と同社員は述べた。
11月、上級幹部を含むグーグル社員60人は実名で、人道犯罪に利用されかねないとして中国検閲機能付き検索エンジン開発を停止するよう、経営陣に求める書簡をネットに公開した。社員らは声明で、自分たちは反中姿勢ではなく、グーグルの技術力が強力な国家の監視機能と市民管理に加担することに反対すると主張している。
(編集・佐渡道世)