中国の習近平国家主席は2日、「台湾同胞に告げる書」の40周年記念イベントで、「一国両制度」による台湾統一の考えを示した。習主席は「中国人は中国人と戦わない」と述べたが、いっぽうで「武力行使を排除しない」と強調。発言は波紋を広げた。
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は1979年1月1日、「台湾同胞に告げる書」を発表し、台湾政府に対して、中国本土との分裂局面を終わらせ、平和統一を呼びかけた。
台湾政府が強く反発
台湾の蔡英文総統は2日、総統府で開かれた臨時記者会見において、習近平国家主席が言及した一国両制度について、「絶対、受け入れられない」と反発した。
「台湾は決して一国両制度を受け入れられない。台湾の絶対的多数の住民は一国二制度に断固として反対している。これは台湾のコンセンサスだ」
蔡総統は就任して以来、九二共識を受け入れない立場を取っている。
高雄市長の韓国瑜氏は、台湾住民に対して、中国当局が台湾を支配下に置く野心について「疑ってはいけない」と警告した。
中国当局の「台湾統一」の真意
米ラジオ・フリー・アジア(2日付)によると、匿名の国内学者は「武力行使を排除しない」を主張する中国側は、台湾に軍事攻撃する可能性が低いとした。中国当局が台湾に侵攻した場合、米国が介入するとみられるためだという。「米軍の介入を予想したため、毛沢東と鄧小平でさえも武力による台湾統一を実行する勇気がなかった。今中国の政治情勢ではなおさら、台湾への軍事侵攻を対応できない」
中国当局が一国二制度による台湾統一と強気に出た理由について、国内学者は、米国の対中強硬政策により中国国内景気が鈍化し、米の同盟国をはじめとした他国との関係も良好ではないため、当局は国内に対して「中国共産党政権は強い政権である」と演出し、「国内の経済・政治問題から国民の関心をそらすと同時に、中国国民の反米感情を煽る」狙いがあると分析した。
香港民主派政治家「一国二制度はペテンだ」
1997年、中国に返還された香港の住民に対して、中国当局は高度の自治が盛り込まれた「一国二制度」を約束した。香港民主党を創設したメンバーの一人、李柱銘氏は、台湾メディア「中央社」(3日付)に対して、鄧小平が将来台湾統一を想定し、香港での「一国二制度」を提唱したことについて、「一国二制度はすでに形骸化した」と述べた。
李氏によると、2014年中国当局が発表した「一国二制度」に関する白書では、当局は香港に対して全面的な統治権を有すると強調した。「これは、中国当局が一方的に、香港人による香港の統治を取り消すことの始まりだ」
また近年、中国当局は中国の憲法と、高度の自治を定められている「香港特別行政区基本法」が「親子関係だ」と喩えた。昨年に開通された広東省と香港を結ぶ高速鉄道では、終点となる香港の西九龍駅で中国の出入境管理施設の設置が認められた。中国当局が、香港域内で警察権の行使が可能になった。
李柱銘氏は、「一国二制度」がすでに「一国一制度」になったと述べた。同氏は、香港の現状をみた台湾の住民は「一国二制度」を受け入れるはずがないだろうとの見方を示した。
2014年に起きた香港特別行政区行政長官の普通選挙を求める民主化運動、「雨傘運動」の元学生リーダー・黄之鋒氏は、香港で「一国二制度」が実現されたことがなく、「全くの詐欺だ」と強く非難した。
中国当局の圧力を受けた香港の立法会(国会に相当)は2016年以降、選挙で当選した民主派議員6人の議員資格をはく奪した。
(翻訳編集・張哲)