中国経済の失速が一段と鮮明になっているなか、中国の株式市場は2月に入って以来、主要株価指数である上海総合と深セン成分指数が急上昇し、強気相場に入った。個人投資家が株価のさらなる上昇を見込んで相次いで買い注文を出す一方で、上場企業の大株主などは強気相場を利用して保有株式を売却している。
2月単月で、中国の上海総合指数が約14%、深セン成分指数は約20.75%上昇した。2月25日、上海市場と深セン市場の取引高の合計額が1兆元(約16兆7000億円)大台を超えた。
上海総合は3月4日午後2時14分現在、前日終値比2.66%高の3073ポイントを付けた。昨年6月以降、約8カ月ぶりに3000台を回復した。
中国株価の急騰は2015年の株価の暴落以降、初めてのことだ。最大の原因は、中国当局による官製相場にある。
中国国内の金融アナリスト任中道氏は、米の中国語テレビ放送「新唐人」に対して、中国株の急上昇について分析した。任氏によると、中国人民銀行(中央銀行)は1月に、市中銀行の預金準備率を1%引き下げたうえ、今後の金融政策について緩和的姿勢を示した。「中国当局が、信用拡大および金融緩和の方針を示すたびに、中国の不動産市場と株式市場はそれに反応して、強気相場になる」
中国当局は1月末から、株式市場について好材料となる政策方針に言及し、株価相場の上昇を誘導した。
中国メディア「新京報」1月28日付によると、中国の銀行業と保険業の監督当局、銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の肖遠企・報道官は英紙フィナンシャル・タイムズの取材に対して、当局は保険企業などの機関投資家による上場企業株式の保有増加を支持すると発言した。
また中国メディアは2月25日、中国人力資源・社会保障部は、養老年金の投資規模拡大を奨励すると相次いで報道した。当局は株式市場に対して、養老年金の市場参入の拡大を示唆した。
いっぽう、任中道氏は現在、場外配資(外部信用取引)という信用取引の拡大が、株価急上昇の一因であると指摘した。一部の個人投資家は、融資会社から資金を借り、高いレバレッジをかけて買い注文を増やしている。香港紙「経済日報」2月末によると、場外配資を提供する融資会社の審査条件は緩い。同紙の記者の調査では、同サービスを利用する場合、実名を名乗ることもなく、自らの電話番号だけを告げれば、レバレッジ10倍の資金を借りられるという。
任氏によると、2015年中国株式市場の暴落の前年、2014年に場外配資による信用取引も急増していた。前例を踏まえると、今年2014年と同様にレバレッジ取引が急拡大すれば、来年にも2015年のような暴落が生じる可能性が高い。
中国のある証券会社で証券ディーラーを務める劉さんは新唐人に対して、今後の株価相場急落リスクを警告した。「中国当局が往年、個人投資家に対して株取引を奨励し、株価の暴騰を容認してから、突如方針転換して、『狂ったブル(瘋牛)』、つまり過熱した株式市場を沈静化し、株式信用取引やレバレッジ取引を取り締まる傾向がある」
劉さんは、中国当局がいつ株式市場関連政策を転換するかに留意しなければならないとの見方を示した。
中国メディア「新浪財経」2月26日付によると、中国の中央財経大学金融学院の賀強教授など専門家6人は、官製相場を非難した。賀教授は、「政策を頻繁に変えないでください」とした。教授によれば、現在、経営赤字が数十億元(約数百億円)に達した上場企業の株価すら急騰しており、中国証券監督当局は、頻繁にストップ高になった銘柄への監督管理を放置している。
いっぽう、各上場企業の大株主は株価の上昇に乗じて、利益確定の売りを増やしている。
中国メディア「華爾街見聞」の報道によると、中国市場調査会社「Wind数据」の統計では、2月27日時点で中国A株式市場に上場する企業のうち315社が、583件の株式売却計画を発表した。時価総額は573億8600万元(約9583億4620万円)。また、今年に入ってから、上海と深セン両株市場に上場する90社の企業の上級幹部238人が保有株式の売却計画を公表した。
中国金融智庫の鞏勝利・研究員は、中国経済指標が低迷して、企業収益が悪化しているため、現在株式市場の強気相場は経済実態とかけ離れていると指摘した。鞏氏は、中国経済状況を良く知る各企業の大株主が、この官製強気相場を利用して株式の売却に走っているとの見方を示した。
中国国家統計局が2月28日発表した2月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.2と、3カ月連続で景気改善・景気悪化の節目である50を下回った。16年2月以来3年ぶりの低水準となった。中国の生産活動と輸出の低迷を反映した。
また、民間企業が発表した2月製造業PMI指標も不振だった。中国の財新メディアと英の調査会社マークイットが3月1日に発表した2月製造PMIは49.9だった。中国当局の公表内容と同様に、3カ月連続で50を下回った。
(翻訳編集・張哲)