中国著名経済学者の向松祚教授はこのほど、香港メディアの取材で「ある省ではトップ100人の民間企業家のうち、40人以上が逮捕された」と発言し、中国当局による民間企業への圧迫が企業家の信頼感を低下させ、経済失速の原因の一つになっているとの認識を示した。ほかの原因として米中貿易戦の影響、金融リスクの拡大を上げた。
中国人民大学国際貨幣研究所副所長の向教授は昨年、人民大学での講演で、中国当局が公表する国内総生産(GDP)統計の信ぴょう性に疑問を呈したことで、国内外から注目された。
香港メディア・信報3月28日付は向教授のインタビュー記事を掲載した。
向教授は取材中、中国当局が私有制を根絶する姿勢を示したことが、民間企業家の信頼感を低下させたと述べた。
「昨年5月、中国当局はマルクス生誕200周年を祝うイベントを大々的に行った。最高指導部のメンバーらは『共産党宣言』をグループで再学習したという。これに対して、中国の企業家は非常に困惑した。『共産党宣言』は私有制の消滅を主張しているからだ」
向教授によると、それ以降企業家の多くは危惧し、長期投資を控えるようになった。なかには資金を海外に移転し、移民した人もいるという。
「中国最高人民検察院(最高検)のある副検察長はこのようなことを教えてくれた。副検察長が研究リサーチのため、国内のある省を訪ねた。その際、同省トップ100人の民営企業家のうち、40人以上が当局に拘束されたことを知って驚いたという」
中国の民間企業は、中国全国の5割以上の税収入、GDPの6割以上、技術革新の7割以上、都市部雇用機会の8割以上をそれぞれ貢献しているというデータがある。
2018年以降、中国当局は「国進民退(国有経済の増強と民有経済の縮小)」を主張し、国有企業を重視するようになった。
同年1月、中国人民大学マルクス主義学院の周新城教授は、共産党の理論誌「求是」において、自由派学者である張五常教授と呉敬璉教授を名指して批判し、「共産主義の目的は私有制を消滅することにある」と強調した。当局が同記事を掲載した政治的意図について、国内外から関心が集まった。一部では、文化大革命の再開のシグナルだと推測。
いっぽう、向松祚教授は2019年上半期における中国経済の下振れ圧力が高まっていると指摘した。このほど、上昇基調にある中国株式市場に関しては、教授自身は「全く信頼性がない」と述べた。
(翻訳編集・張哲)