米、昨年中国学者30人のビザ取り消し、「防諜のため」=米メディア

2019/04/16 更新: 2019/04/16

米政府は昨年、防諜対策の一環として、中国人学者と専門家約30人の米国入国査証(ビザ)を取り消し、または再審査したことが明らかになった。米紙ニューヨーク・タイムズが14日報道した。

報道によると近年、米中両国の学術交流が緊密になり、両国政府および民間の学者や研究者は頻繁に相互訪問している。米政府は数年前、一部の中国国民に対して有効期限10年のビザを発給した。しかし、トランプ政権は、中国当局が在米中国人学者や留学生を利用して、米企業や研究機関で情報を盗むことに警戒感を高めている。

報道は、中国の南京大学の朱鋒教授を例に挙げた。朱教授は昨年1月、米国での訪問活動を終え、ロサンゼルス空港から帰国しようとした際、米連邦捜査局FBI)の職員にパスポートの提示を求められた。FBIの職員は朱教授の訪米ビザをその場で取り消した。

朱教授は南京大学の中国南海研究協同革新センターの執行主任を務め、東アジアや中国の政治、外交、国家安全戦略、米中軍事問題などの専門家だ。過去には米のハーバード大学、シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)などを訪問したことがある。

教授はニューヨーク・タイムズに対して、過去に中国当局の「中国国際友好連合会(China Association for International Friendly Contact、CAIFC)」が主催した北東アジアの安全保障問題に関する会議に参加し、中国外交部(外務省に相当)の政策策定にも協力したことがあると述べた。

朱教授は、自らの研究活動は米中関係に害を与えていないと強調した一方で、「中国は警察国家だ。国家安全当局の幹部が私のオフィスに踏み込んだ時には、私は彼らを阻止できない」と中国当局に従わざるを得ない現実も述べた。

昨年11月末、米スタンフォード大学フーバー研究所のラリー・ダイアモンド(Larry Diamond)教授など、中国問題専門家30人以上が、共同研究報告書を発表した。報告書は、中国当局が米の大学、シンクタンク、企業への影響力を拡大しており、米国の民主主義制度の崩壊を狙っていると警告した。また、中国当局は、サイバー攻撃や非伝統的な「情報屋(在米中国系住民など)」を利用し、米企業と政府機関から機密情報を取得しようとしていると指摘した。

報告書は米政府に対して、中国の報道機関の記者、シンクタンク、大学の研究者へのビザ発給に制限を設けるよう提案した。

ニューヨーク・タイムズは、中国政府系シンクタンク・中国社会科学院の研究者は最も影響を受けるだろうとの認識を示した。

報道によると、中国社会研究院の研究者数人は昨年、ビザを取り消された。中国人学者は現在、訪米ビザを申請する際、過去15年間の住所や電話番号、他国への渡航状況などの情報を米政府に提示する必要があり、「あまりの手間で今後の訪米を断念した」とある学者は話した。

(翻訳編集・張哲)

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